この夏、我が故郷の富山県で、ユニークな展示企画が開催されました。それが「わけあって絶滅しました展」(氷見市芸術文化館7月13日〜8月21日)。
丸山貴史氏の著作『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』をベースに、約35億年前の生命の誕生から始まり、現代に至るまでの生物進化の歴史の中で栄華を極めながら、絶滅していった動物たちが紹介されていました。
本稿では、この展示でも紹介された「おもしろい動物たちの絶滅トピック」を紹介し、環境変化と絶滅の関係を眺めながら、現代の大絶滅と人間の未来について考えてみたいと思います。
カンブリア爆発が産んだ奇妙な動物たちの末路
今からおよそ5億4200万年前から5億3000万年前のカンブリア紀に形成された地層から、それより前の時代の地層では全く見られなかった、体の造りが複雑で硬い殻・骨格を持つ多様な生物の化石が大量に発見されました。このことから、生物の種類や数がこの時期に爆発的に増えたと考えられ、多くの古生物学者がこの時代の生物の多様化を「カンブリア爆発」と呼ぶようになりました。
しかし、その後の遺伝子系統解析などによって、カンブリア爆発よりも前に生物の多様化は進んでいたことが示されるようになりました。カンブリア紀で、生物が一斉に殻などの硬い体構造を進化させたことから、化石に残りやすくなった結果、化石の発見記録数で急激に進化が進んだように見えているのではないかと、最近は考えられるようになっています。
ただ、このカンブリア紀の化石から復元された生物たちの中には、原生の生物では考えられないような形態をしたものが数多くあり、まさに「生物の進化は爆発だ!」と思わせてくれます。
その代表格がアノマロカリス、ハルキゲニア、そしてオパビニアという海中で栄えた動物たちではないでしょうか。
アノマロカリスという名前はギリシャ語で「奇妙なエビ」を意味し、体長30cmほどの独特の風貌をした肉食性の節足動物とされます(図1)。化石が発見された当初は、1mを超える巨大な体で強力な円形の口でバリバリと三葉虫などの甲殻類を捕食していたのではないかと推定されていましたが、現在では、もっと小型で、しかも噛む力は弱く、クラゲやプランクトンのような小型の動物を吸い取るように食べていたらしいことがわかってきました。結局、この捕食能力の脆弱さが仇となり、その後に進化してきた魚類の祖先など、新手の捕食者との競争に負けて絶滅したと考えられています。
そんなアノマロカリスの捕食対象だった小動物がハルキゲニアでした(図2)。彼らは体のサイズも手のひらに乗るほど小さく、体も柔らかかったのでアノマロカリスの絶好の餌でした。
そこでハルキゲニアは背中に強力な棘状の突起を14本立たせるように進化し、捕食を免れるようになりました。ところが調子に乗ってトゲをでかく進化させすぎて、身動きがとりにくくなって絶滅してしまったとされます。
またアノマロカリスをさらにバージョンアップしたような捕食動物がオパビニアでした(図3)。5つも目を付け、1本の腕を象の鼻のように伸ばし、腕の先には鋏をつけて獲物を捕まえる、というなんともややこしい体の作りを進化させて、その構造の複雑さが仇となって環境変化に追いつけず絶滅したと考えられています。
生物の進化とは試行錯誤の繰り返しであるということがこのカンブリア紀の生物たちを見ているとよくわかります。
頻尿ゆえに滅んだファソラスクス
今から約2億年前の三畳期に、恐竜に先立って陸域の覇者となったファソラスクスという大型爬虫類は、体長が8~10mにもおよぶ肉食動物でした(図4)。恐竜の祖先も含めて、当時生息した他の動物たちを餌として、向かう所敵なしでしたが、水が豊かな時代に進化したがために、体内に水を蓄える機能が脆弱で、おしっこを我慢することできなかったのではないかと推定されているそうです。
そのため、地球環境の変化とともに陸域における水辺環境が減ってしまったジュラ期に「おしっこのしすぎで絶滅」してしまったのではないかとする説があるのです。尿意をコントロールできなかったこと(つまり、漏らしっぱなし)で絶滅なんてあまりに悲しくておもしろすぎます......。