映画スターにもなった今は亡き古代巨大ザメ
企画展の中でも特に人気を博していたのが、「メガロドン」でした。メガロドンとは、約2300万年前から360万年前の前期中新世から鮮新世にかけて生息していたとされる巨大ザメで、その実物大イラストは、子どもたちの絶好の撮影スポットになっていました。
この巨大ザメは、SFパニック映画「MEG ザ・モンスター」シリーズが最近公開されたことで一躍有名になった絶滅動物でもあり、それゆえに子供たちにとっても憧れのモンスターなのでしょう。映画の中では、この巨大ザメが、船ごと人を襲う大暴れをして見せて、モンスター映画ファンたちの心を踊らせてくれました。
しかし、実際のメガロドンはその巨体ゆえに、俊敏に動くことはできず、後から進化してきたシャチなどの海産哺乳類や、自分の仲間でもあるホオジロザメなど小型で俊敏に動けるサメ類などに襲われたり、餌を横取りされたりする立場に追い込まれ、最終的に滅んでしまったとされます。
隣に飾られている現生のホオジロザメのアゴの骨と比較してもその大きさに圧倒される(撮影:筆者)
恐竜の絶滅と哺乳類の進化、そして人類の誕生
さまざまな絶滅生物の中でも、一番人気な種群といえば、やはり恐竜類でしょう。ティラノサウルスを筆頭とする多種多様な恐竜たちは、今から6600万年前の白亜紀末期に至るまでの1億6千万年もの長い時代、この地球上で繁栄していたとされます。人類の歴史がたった20万年と考えれば、いかに恐竜の時代が長く続いたかがよくわかります。
恐竜がこの地球上で長きにわたり繁栄できた理由については、さまざまな学説が提唱されており、今も研究と議論が続けられていますが、究極的には、この1.6億年間の地球環境が彼らにとって非常に住みやすいものだったのであろうと推察されます。
そんな栄華を極めた恐竜たちも今から6600万年前に起こった大隕石の地球衝突によって、地球全体の気候と植生が激変してしまったことで、全ての種が滅んでしまいました。
生物の繁栄と絶滅を決めるのは環境です。そして「絶滅と進化は背中合わせ」であり、新たな進化は絶滅なくしては起こらないのです。
恐竜たちが滅んでしまって、今となってはその生きた姿を見ることができないことは、恐竜好きにとっては寂しくも思えますが、彼らが滅んでしまったおかげで、実は私たち人類もこの地球上で生きていられるのです。
隕石が落ちるまでは、地球上のあらゆる環境は恐竜たちの天下でした。哺乳類の祖先たちは、ネズミほどの大きさでしか生きられず、恐竜たちの闊歩に怯え、隠れて生きていたのです。
陸域だけでなく、空は翼竜という空飛ぶ爬虫類が、海の中は魚類という獰猛な爬虫類がそれぞれ牛耳っており、この恐竜全盛時代の地球においては哺乳類が進化する余地はほんのわずかしか残っていませんでした。
それが大隕石の落下によって、それまでの地球環境の覇者=恐竜、翼竜、および魚竜たちが一斉に滅びて、哺乳類たちはこの地球上でのびのびと生きられようになったのです。そして進化を繰り返し、多様性を花開かせた哺乳類の中から私たち人間も誕生しました。
野生生物と人類、絶滅するのはどちらが先か
冒頭で紹介した展示のイベントとして、私も「人と野生動物はどちらが先に絶滅するのか」というタイトルで講演させていただきました。現在、人間活動による環境破壊が野生生物の急速な絶滅を招いているとされますが、果たして人間もこのままで生き残れるのか?という内容の講演でした。
わずか20万年間の歴史しか持たない私たち人間が、今、生物史上あり得ない速度でこの地球環境を悪化させ、生物たちの絶滅を加速していることが深刻な地球環境問題となっています。
野生生物が生きていけない世界で、動物の1種である私たち人間だけが生き延びることなどあり得ません。それどころか、人間は生物学的にもっとも環境変化に対して脆弱な動物であり、生物多様性が維持された健全な環境と、そしてその環境が支える健全な社会なくしては、生き続けることができない存在なのです。
自ら激変させた地球環境によって、今度は人間が滅びる番かもしれない......。そうした危機感を持って、これからの人間社会と自然の共生のあり方を考えていくことが今こそ必要なのだと、この「絶滅展」を通じてひしひしと感じたのでした。

