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世界を攪乱「トランプ関税」 環境系施策・事業への影響は?(後編)

最終更新日: 2025年5月26日

(出所:ホワイトハウス)
(出所:ホワイトハウス)

トランプ米大統領が4月2日に発表した世界共通関税、相互関税の影響は計り知れない。米国の巨額貿易赤字を問題視するトランプ氏は対米輸出の多い国に容赦なく高関税をかけた。自由貿易を身上としていた米国が一気に保護主義に傾く中、脱炭素、循環経済など環境系の施策や産業・事業への影響はどの程度あるのだろうか。(前編はこちら

対米輸出、4〜5兆円のコスト増見込み

トランプ関税発動の大きな理由とされた貿易赤字という観点で言えば、日本への影響が大きいのは対米輸出産業になる。日本の対米輸出で比率が大きいのは自動車に加え、原動機や半導体製造装置などの一般機械、重電機器、電気計測機器などの電気機器になる。

これらの製品への相互関税が発表通り24%となると、現在の対米輸出総額(2024年で約21.3兆円)で単純計算すると、4兆円から5兆円のコスト増になる。

自動車各社、相互関税対策でEV開発、脱炭素の取り組みなど後回しも

このようにコストが大幅上昇する局面では、環境産業、環境事業のうちEVの開発・販売戦略は大きく後退する可能性がある。日本の自動車各社は相互関税対策で事業の再編やコスト削減などを迫られ、投資資金がかかる気候変動対策、脱炭素の取り組みは後回しにされる可能性が高い。

トランプ氏を支えてきた実業家、イーロン・マスク氏もここにきて、自身が経営するEV大手のテスラへの影響を考慮してか、トランプ氏の関税政策に強く反対している。

これまでトランプ氏の片腕として動いてきたイーロン・マスク氏もトランプ氏の関税政策には猛反対している(出所:マスク氏公式X)
これまでトランプ氏の片腕として動いてきたイーロン・マスク氏もトランプ氏の関税政策には猛反対している(出所:マスク氏公式X)

英国、HV・PHVの廃止時期を2035年に先送り

英国もこのトランプ関税の動きに合わせる形で、EV普及までの「つなぎ」の手段とみられていたハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)などの新車販売における廃止時期を2035年に延期した。これまでは2030年までに廃止としていたが、トランプ関税による影響もあり、気候変動対策の規制を緩める方針に転換した。

サプライチェーンの脱炭素戦略にも影響

米国に製品を販売・輸出する各分野のサプライチェーン企業にも影響が出そうだ。日本の中小企業はただでさえ脱炭素への取り組みが遅れがちであり、今後トランプ関税の影響が大きくなると、CO2排出量の削減どころではなくなる可能性がある。

日銀による利上げも当面は困難な状況になるのは間違いなく、各金融機関もトランプ関税の動向を慎重に見極めながら、融資や投資の判断をするとみられる。

相互関税によって米国国内の太陽光・風力発電などの再エネ事業も先行きが見えない。画像はイメージです(出所:PIXTA)
相互関税によって米国国内の太陽光・風力発電などの再エネ事業も先行きが見えない。画像はイメージです(出所:PIXTA)

再エネ事業、相互関税で市場の構図一変か

相互関税によって大きく市場の構図が大きく変わる可能性があるのが、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー系の事業だろう。

米国は中国に対し、当初発表した34%の相互関税を含め、100%を大きく超える関税をかける方針を示した。米中による貿易戦争はすでに激化どころか、報復が報復の連鎖を生む泥沼化の様相を呈している。

総合に関税をかけ合い続ける米中の貿易戦争は泥沼化している(出所:中国外交部)
総合に関税をかけ合い続ける米中の貿易戦争は泥沼化している(出所:中国外交部)

太陽光や風力など再エネ事業において世界でシェア拡大を続ける中国への圧力は非常に強く、中国が圧倒的なシェアを持つ風力発電、太陽光発電などの製品は米国でのシェアが低下する可能性が高い。ただ、そこに日本企業が割って入るには、強固な経営基盤と価格や技術における競争力が不可欠であるのは言うまでもない。

中国、米国を強く非難「WTOルールに違反」

中国外交部は今回のトランプ関税について「最近、米国はさまざまな口実で中国を含むすべての貿易相手国に関税を課している。これは各国の正当な権利と利益を深刻に侵害し、世界貿易機関(WTO)のルールに深刻に違反している。ルールに基づく多国間貿易体制を深刻に損ない、世界経済秩序を深刻に混乱させるものだ。

中国政府はこうした動きを強く非難し、断固として反対する」と強く非難し、米国が不当な関税政策を続ける限り、報復関税で対抗を続ける考えを示した。だが、先行きの状況は見通せず、不透明感が強い。

米国のエネルギー・農産物など輸入要求も

一方、米国が輸出を強化するエネルギーや農産物・食品系の製品については日本が輸入を強く求められ、調達コストの上昇、国内産業の圧迫につながる可能性がある。

日本が報復関税をかける可能性は今のところ低そうだが、トランプ氏という一筋縄ではいかない相手を前に、どれほど日本が自国の利益を挽回しながら交渉できるのか。気候変動対策、環境対策の行方も、その動向に強く左右されるだろう。