トランプ米大統領が4月2日に発表した世界共通関税、相互関税が世界に大きな衝撃を与えている。米国の巨額貿易赤字を問題視する大統領は対米輸出の多い国に容赦なく高関税をかけた。各国同士の「ディール(取引)」による交渉の余地は残しつつも、他国を締め出す流れは不変だろう。脱炭素など環境系事業への影響はどの程度あるのだろうか。
相互関税、世界57カ国・地域が対象 中国34%・日本24%
米国は4月5日からすべての国の米国輸入品について一律10%の世界共通関税を課したほか、4月9日から世界57カ国・地域に対する相互関税を適用すると発表した。
発表によれば、相互関税の国・地域別税率は中国が34%、EUが20%、ベトナムが46%、台湾が32%、インドが26%、韓国が25%などとなっており、日本に対しても24%の相互関税がかけられる。
交渉希望国など、相互関税90日間停止 取引材料に
その後、この不当な関税をめぐり、日本も含めた70を超える多くの国・地域が米国との交渉を希望した。トランプ氏はこれを受け、米国への報復関税をしなかった国に対して相互関税の適用を90日間停止すると発表した。
この措置は金融市場の下落や混乱を踏まえた大統領の方針転換のようではあるが、まず高く「ふっかけた」関税をあくまでも外交交渉、取引の材料にする点については、まさに大統領の狙い通りといえる。
中国への関税、計145%に
米国向けに大量の製品を販売・輸出している中国については、すでにかけられていた20%の追加関税、相互関税の34%上乗せに加え、中国の報復関税措置に対抗して90%程度の追加関税をかける方針を表明した。中国からの米国向け輸入品への関税は計145%という桁違いの数字になった。
カナダとメキシコは事前に追加関税
2025年3月、事前に25%の追加関税が発動されたカナダとメキシコは今回の相互関税の対象外となる。両国と米国との自由貿易協定に基づく取引品目については関税が猶予される。だが、米国から近く、米国への輸出品目が多い両国にとって厳しい関税措置であることには変わりない。
米国、自由貿易から保護主義的姿勢へ
トランプ氏は就任以前から、厳しい関税措置をとる方針を打ち出していた。各国もトランプ氏の関税政策に身構えていたものの、就任わずか3カ月弱、議会の議論も経ずに大統領権限でこれほどの重要事項をあっさりと決めてしまった。米国の象徴である自由貿易体制に背を向けるような保護主義的な姿勢が鮮明になり、世界の危機感は強い。
株式市場も大きく下落、日本経済への影響甚大
長年の同盟国である日本に対しては何らかの「温情措置」があるのではと見る向きもあった。だが、トランプ氏は「日本は米国をひどく扱ってきた」などと批判し、想定を上回る相互関税率を容赦なく上乗せした。関税の影響で株式市場もジェットコースターのように激しく乱高下し、早くも日本経済に大きな打撃を与えている。
日本への相互関税は24%となったが、そのほか日本企業が製造拠点を持つ国・地域への関税も間接的に影響がある。中国やベトナムなどは高い相互関税を課されており、こうした国から対米輸出をしていた日本企業にとっては大きな影響がある。
日米首脳、電話で会談 石破首相「日本の投資余力減衰を懸念」
相互関税発表後の4月7日、トランプ氏と電話会談した石破茂首相は「今般のアメリカ合衆国の関税措置は極めて遺憾。私から大統領に対し、日本が5年連続で世界最大の対米投資国であり、アメリカの関税措置により日本企業の投資余力が減退することを強く懸念している」と述べた。
石破首相によると、日本としては「一方的な関税ではなく、投資の拡大を含め、日米双方の利益になる幅広い協力の在り方を追求すべきだ」との姿勢を示し、協議を通じて措置を見直すことを強く求めた。両国はそれぞれ担当閣僚を指名し、協議を続ける。
日本の対米貿易黒字8.6兆円 大統領が問題視
なぜ日本にここまでの相互関税がかかることになるのか。最大の要因は日米の貿易が不均衡だと考えるトランプ氏の強い不満である。財務省によると、2024年の日本の対米輸出額は約21兆3000億円で、対米貿易黒字は約8兆6000億円。大統領はこの点を問題視し、世界各国の中でも高い部類の関税を日本に課したとみられる。
自動車産業への影響甚大
中でも特に影響が大きいのが、対米輸出額が約6兆円と最も多い自動車産業である。トヨタ自動車などはすでに生産地域のリスク分散を進めているが、うまく分散できていない日産自動車などは苦境に立たされる。日産は相互関税の発表直後、米国向け自動車の生産の一部を米国での現地生産に切り替える検討に入ったという。
日本の自動車産業はただでさえEVの開発や販売拡大から世界的に乗り遅れており、総合関税の発動によってさらに苦境に立たされる。とりわけ、各社のEV戦略は大幅な遅れが懸念されるため、日本を含む各国の脱炭素戦略や環境系の産業にも大きな影響を与える可能性がある。
米国向け販売・輸出企業4800社
帝国データバンクによれば、米国向けに製品を販売・輸出する日本企業は約4800社。今後の両国の交渉次第ではあるものの、トランプ関税の影響を受けることは間違いない。世界経済が激動にさらされる中、環境対策との両立は果たして可能なのだろうか。
後編では、環境産業・事業への影響を考察する。
【参考】