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原油市場で進む「東西ブロック化」、高まる価格変動リスクに注意

最終更新日: 2025年9月25日

原油市場では、米国や欧州などの西側先進国と中国やロシア、イランなどの東側諸国との間で貿易取引が減少している。東西間の取引が世界全体に占めるシェアは足元で3%弱と、2016年に比べて4分の1に縮小した(図表)。一方、西側諸国同士や東側諸国同士で行われる原油貿易のシェアは、同時期に2倍弱に拡大した。

米国の対イラン石油取引制裁の強化

東西間の原油貿易量が減っている(Energy Institute,BPを基に日本総研作成)

東西で供給網が分断されつつある背景には、次の2点がある。第1に、米国の対イラン政策である。トランプ第1次政権は、2018年にイラン核合意を離脱し、イランとの石油取引に関与する企業に対する制裁を強化した。この結果、日本や欧州はイランからの原油調達が困難となり、同国からの輸入量は急減した。一方、中国は原油の産地をイランではなく他国に偽装することなどを通じて米国による制裁を回避し、割安となったイラン産原油を積極的に輸入している。

ロシアのウクライナ侵攻長期化

第2に、欧州の対ロシア政策である。2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、欧州連合(EU)は「リパワーEU(REPowerEU)」計画を策定し、ロシアからの石油輸入を2027年末までにゼロにする方針を打ち出した。EUはロシア産原油の輸入を着実に減らす一方、その穴埋めとして米国などからの代替調達を進めてきた。こうしたEUの動きに対して、ロシアは原油の輸出先を中国に振り向けることで対応している。

原油の供給網が東西で分断される傾向は今後も続く見通しである。トランプ第2次政権はイランに対する強硬姿勢を維持しているほか、EUがロシア産原油の調達を減らす方針も変わらない。加えて、7月に妥結された貿易交渉の結果、EUは米国から石油などのエネルギー(液化天然ガスや核燃料なども含む)を今後3年間で7500億ドル分輸入することを決定した。このため、欧米間の原油貿易は一段と増加するとみられる。

原油供給網の分断は世界に影響をもたらしている。画像はイメージです

供給網の分断、原油価格乱高下の懸念

このような供給網の分断は、需給の円滑な調整を阻害することで、原油価格を乱高下させる可能性がある。とくに、西側先進国では全体としてみれば、原油需要に対して供給能力が小さく、供給ショックが発生した際に自陣営内だけでは対応しきれないリスクがある。

そのため、わが国政府や企業には、こうしたリスクへの備えが求められる。供給面では、西側にも東側にも属さないグローバルサウスのなかでも、産油量の多いサウジアラビアなどの中東諸国との関係を維持・強化することが重要となる。需要面では、脱炭素に向けた取り組みを着実に進め、国内の原油需要を縮減していくことで、原油市場の動向に左右されない経済構造への転換を進めていくことが不可欠となる。

著者プロフィール

日本総合研究所 調査部研究員 栂野 裕貴

研究・専門分野は内外マクロ経済、環境・エネルギー政策。