BCP策定ガイド
05 実践的運用ガイド
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05 実践的運用ガイド
BCPはつくって終わりじゃない
―運用と社内定着のポイント
BCP(事業継続計画)は、ただ策定するだけでなく現場の理解を深める必要があります。
「計画はあるが、現場が内容を理解していない」「社内の協力が得られず、形骸化している」「長らく見直されておらず、社内の現状に合っていない」といった課題を抱えている企業の声は少なくありません。
BCPは、実際に機能してはじめて意味を持ちます。ここでは、BCPを社内に浸透させるためのステップとして、社員への周知、実践的なトレーニングの進め方、定期的な見直しのポイントを具体的に解説します。BCPを活用するヒントとして、ぜひ参考にしてください。
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05 実践的運用ガイド:記事一覧
以下のテーマ別に分かりやすくご紹介していきます
1.BCPを社内で定着させるポイント
2.BCPの社内理解と実践力を高めるポイント
3.社員の協力を得るために「巻き込み型」運用を
4.BCPは定期的な見直しを
5.まとめ:まずは小さな一歩から
このコンテンツのポイント
BCPは社内に浸透させてこそ意味がある
・視覚ツールや役割別の整理で「自分ごと」として社員に理解・定着させる
実践的なトレーニングで行動力を育てる
・机上・模擬・実地の訓練を通じて、知識だけでなく「動ける力」を養う
BCPは定期的に見直し、改善し続けることが重要
・体制や環境の変化に応じて適宜見直し、常に「使える状態」を維持する
BCPを社内で定着させるポイント
せっかく策定したBCPも、現場で機能しなければ意味がありません。社員一人ひとりがBCPの内容を理解し、有事の際に迷わず行動できる状態を整えることが重要です。
計画を「つくって終わり」にしないためにも、経営層が中心となって全社的に浸透させる仕組みづくりが求められます。
中小企業では、日常業務の忙しさから教育やトレーニングが後回しになりがちです。ここでは、現場の負担をなるべく抑えながら、BCPを効果的に周知・定着させる実践的な方法を紹介します。
1.現場での実体験
たとえば、被災地でのボランティア活動を通じて“災害の現実”を肌で感じることにより、BCPの重要性を理解するきっかけになります。
CSR(企業の社会的責任)の一環としてボランティア活動に取り組むことで、地域社会への貢献も叶います。
2.役割ごとの情報整理
BCPの策定は、業種・部署・社員の役割によって、求められる内容をフレキシブルに反映することがポイントです。
部署や役割ごとに伝えるべき内容を明確にし、「自分ごと」として捉えられるように整理しましょう。
3.視覚的ツールの活用
ポスターやカードなど、視覚に訴えかけるツールを活用することで、短時間で効果的に情報を伝えられます。
熊本地震後に普及が進んだアクションカードは、役職や業務ごとに必要な行動を簡潔にまとめたカード形式のツールです。
1枚ごとに、目標と、そのために取るべき具体的な行動手順を記載します。必要な連絡先などもまとめておけば、迷わずに対応できます。また、緊急事態発生時に各自が迅速に的確に行動するためにも、より平易な言葉で記述するのもポイントのひとつです。
他にも、「5分間で確認すべきこと」といった時間軸を意識させる項目や、「ヒト・モノ・カネ・情報」など、重要リソースの被害状況を素早く把握するための項目を設けることもあります。
アクションカードを用意・活用することで、初動対応のスピード向上が期待できます。
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BCPの社内理解と実践力を高めるポイント
続いて、BCPの社内理解と実践力を高めるトレーニング方法について解説します。
BCPは「知っている」だけでは不十分で、社員一人ひとりが有事に適切な行動を取れる「実行できる」状態でなければ機能しません。とはいえ、「BCPに費やす時間がない」など、本業にリソースを割く必要がある場合に、BCPのトレーニングは後回しになりがちです。
しかし、日頃から小さな取り組みを積み重ねることで、従業員の命や事業を守る力を確実に育てることができます。また、社員が「できること/できないこと」「知っていること/知らないこと」を洗い出すワークショップは、BCPの現状把握と課題特定に役立つでしょう。
早速、BCPの実践力を高めるトレーニングの方法についてご紹介します。
実践力を高めるBCPのトレーニング方法
防災訓練など、年に一度の全体トレーニングをはじめ、各部署が日常的にBCPを意識して取り組むことが重要です。たとえば、部署単位でトレーニングを重ねることで理解が深まれば、有事の際にスムーズに連携できます。
また、地域によって自然災害のリスクは異なり、業種によってはサイバー攻撃への備えが重要になる場合もあります。自社にとって発生リスクの高い事象に焦点を当てることで、実効性の高いBCPが実現可能です。
仮に、自然災害をトレーニングの対象にする場合は、自社のリスク分析に基づき、優先度の高いものに絞ると効果的です。
机上トレーニング
机上トレーニングは、シナリオに沿って災害発生時の対応をイメージしながら、BCPの理解を深めることが目的です。
自社の業務に合わせたシナリオを設定し、部署ごとに対応を検討・発表するワークショップを定期的に実施します。
ワークショップを実施する際には、地震やサイバー攻撃など特定の災害など、具体的な被害を想定することがポイントです。「地震が起こったら、まず何をすべきか?」「この状況で誰に連絡を取るか?」といった具体的な問いを社員に投げかけ、議論を促すようなものでも構いません。
また、BCPを学べるボードゲームなど、楽しみながら学べるトレーニングも効果的です。
模擬(ロールプレイ)トレーニング
模擬トレーニングでは、初動対応や情報連携の課題を洗い出します。机上トレーニングで得た知識を実践に移す段階で行なうと効果的で、年1〜2回、組織全体で実施するのが理想です。
災害時の状況に加え、「取引先と連絡が取れない」「重要なデータにアクセスできない」といった不測の事態も想定し、部署ごとにワークショップ形式で取り組みましょう。
実地トレーニング
BCPの実効性を高めるには、実際のプロセスを体験し、避難経路や復旧手順を確認しながら現実的な課題を把握することが重要です。模擬トレーニングで見つかった課題をもとに、必要に応じて実地トレーニングを行いましょう。
たとえば、「発災から24時間後を想定し、会社で一夜を過ごした後の行動を考える」といった具体的な状況を設定するなど、より実践的なトレーニングを通じて現場の対応力を試すことも有効です。2〜3週間に一度の頻度で実施すれば、自然と意識が高まり、BCPの定着につながります。
また、トレーニングの一環であることを周知したうえで、「通勤中に災害が起きたら?」「営業中に被災したら?」といった問いをLINEなどで不意に投げかけ、フィールドワークで考える機会を設けるという方法もあります。
実地トレーニングは、消防法で義務付けられている防災訓練と組み合わせることも可能です。トレーニングの様子は記録し、今回のトレーニングを評価するとともに、次回のトレーニングに向けた改善に活かしましょう。
BCPは、「知っている」から「できる」へと理解度を高めていく継続的な取り組みです。小さな一歩から始め、社員と会社を守る力を育てましょう。
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トレーニングの事例
BCPのトレーニング方法は、企業規模や業種によって多岐にわたります。
ここでは、中小企業や大企業の具体的な事例を紹介。事例を参考に、組織全体のトレーニングと各部署のきめ細やかなトレーニングを組み合わせながら、BCPの実践力を高めましょう。
福祉施設の事例:避難・移送トレーニング
通所施設と宿泊施設を併設する福祉施設の事例です。
この法人では、河川氾濫の危険がある宿泊施設から、丘の上にある通所施設への避難を想定し、実際の避難経路や移送時間、物資の運搬を含めたピストン輸送の効率を検証するトレーニングを実施しました。
「警戒レベル3」の発令を想定し、車での移動時間や往復回数、医薬品・食料の積み込みなどを含めた実践的な避難トレーニングを行なった結果、荷物量により移動回数や所要時間が想定以上にかかるなど、机上トレーニングだけでは見えなかった課題が明らかになりました。
製造業の事例:火災・復旧トレーニング
製造業では、地震に伴う火災や生産ラインの停止が大きなリスクとなります。
ある企業では、地震発生を想定し、危険物施設の安全確認や初期消火のトレーニングを実施。あわせて、生産ライン停止時の復旧手順をシミュレーションし、代替ラインへの切り替えや他拠点での生産可否も検討しました。
火災の拡大を防ぐ方法や生産停止への対応策を具体的に考えることで、事業継続の確度を高める効果的な取り組みとなっています。
研究機関・化学薬品取扱企業の事例:危険物対応トレーニング
研究機関や化学薬品を扱う企業では、危険物の漏洩や二次災害対策が特に重要です。全社員が危険物の特性を理解し、有事に適切に行動できる知識の浸透が欠かせません。
ある企業では特定の薬品漏洩を想定し、「水を使用しない」「特定の消火剤を用いる」といった安全な対処法を再確認しました。知識のない従業員が危険物に触れて二次災害を起こさないよう、情報伝達と避難経路の確保についてトレーニングを行い、専門資格者との連携も強化しています。
大企業の事例:本社機能移転や広域連携
大企業では、よりマクロな視点でのBCPトレーニングが実施されます。たとえば、「東京の本社機能が被災した場合に大阪や九州の拠点へどう移転させるか」「九州の物流拠点が停止した場合に中国地方からどう物資を調達するか」など、広範囲にわたるサプライチェーンや拠点間の連携に焦点を当てたトレーニングです。
これらの事例からわかるように、BCPは万が一の事態に備え、具体的に「どう行動するか」を経験し、課題を洗い出すことが目的です。企業のブランドを守り、従業員の安全を確保し、事業を継続するための重要な投資として、BCPトレーニングを積極的に実施していくことが重要です。
社員の協力を得るために「巻き込み型」運用を
BCPを社内に定着させ、有事の際に機能させるためには、担当者任せにせず、全社を巻き込むことが重要です。
BCPが「特定の人だけのもの」になってしまうと、運用が属人的になり、形骸化するリスクが高まります。
組織全体の関与を促し、BCPをより実効性のあるものにするための工夫を3つ紹介します。
各部署にBCP担当者を配置
各部署にBCPの責任者(アンバサダー)を置き、さらにその代理者も育成することが理想的です。担当者が不在でも、BCPが滞りなく運用される体制を構築できます。
社内にBCPの知識と責任を持つ人材を配置し、関係者を増やすことで、組織全体でBCPへの理解を深められます。
アンケートによる現状把握
定期的にアンケートを実施し、社員のBCPに対する意識や知識レベルを測りましょう。結果、研修の必要性や内容を判断し、より効果的な周知方法を検討できます。
こうしたアプローチを経て、BCPは「策定された書類」から、緊急時に組織を動かす「生きた計画」へとアップデートされていくでしょう。
情報共有の徹底
BCPは「知る」ことから始まります。策定しなかった場合のリスクだけでなく、策定した場合の具体的なメリットも明確に伝えましょう。自社や他社の成功・ヒヤリハット事例はもちろん、異業種や行政の取り組みも参考に、リアルな議論の場を持つことが重要です。
また、自社のリスクを明確にし、社員全員がそれを理解することで当事者意識を高められます。BCPを組織全体に浸透させ、継続的な見直しと改善のサイクルを回していくことが、企業のレジリエンス強化につながります。
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