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12時間で認知症のリスクが63%UP 健康寿命を縮める「座りっぱなしの害」を帳消しにする習慣〈最新データを紹介〉(2ページ目)

公開日時:2026/07/13

谷本 哲也:内科医

運動習慣があってもダメ?「座りっぱなしの害」を帳消しにする習慣とは――(写真:mits/PIXTA)

「何分続けて座るか」も問題

■体に悪い「座り方」が判明

ここで1点補足しておきたいのが、座りっぱなしの時間の「総量」と「連続性」の違いです。

2時間続けて座りっぱなしでオンライン会議をするのと、2時間の仕事の間に30分ごとに立って資料を取りにいくのとでは、合計時間が同じでも体への影響が異なる可能性があるというのです。

この点を実験的に検証したのが2023年の研究です。

参加者に8時間座りっぱなしでいてもらい、そのなかで「30分ごとに5分歩く」「30分ごとに1分歩く」「60分ごとに5分歩く」「60分ごとに1分歩く」「まったく歩かない」という5つの条件が比較されました。

すると、「30分ごとに5分歩く」という条件だけが、血糖値と血圧の両方を有意に改善し、食後の血糖スパイクを58%低下させました。歩くスピードは時速約3km(散歩程度のゆっくり歩き)でも効果が認められており、必ずしも激しい運動は必要ありませんでした。

一方、30分ごとに1分だけ歩く条件では、血糖改善の効果は限定的でしたが、血圧の低下効果は認められていました。

トイレや給湯室に行くなどでちょっと席を立つ場合は、できれば5分ぐらい席に戻らず、ある程度は体を動かす。それが座りっぱなしの害を相殺し、健康を保つ秘訣と言えるのかもしれません。

座りっぱなしは現代人の怠慢ではなく、環境がそうなっているからです。

筆者が研究者の三浦基(もとい/現・医療法人社団フェリオス東京日帰り手術クリニック)氏らと行った日本のデスクワーカーを対象とした今年発表の研究では、在宅勤務の頻度が高い人ほど、1日8時間以上座っている傾向がありました。

出勤していれば自然に生まれていた通勤・駅までの歩行、部署間の移動、同僚との立ち話といった細かな活動がなくなることで、本人が意識しないうちに座りっぱなしの時間が延びていくのです。

ただ、これは在宅勤務が悪いというわけではありません。むしろ細かな活動がしにくい分、意識的に「30分経ったら5分立つ・歩く」という行動をとりましょうということを、示していると言えます。

「30分に1度立つ」を仕組みに

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。カギとなる考え方が、「エクササイズ・スナック」です。

まとまった運動を一度に行うのではなく、1〜5分程度の短い動きを1日の中で、スナックをつまむように何度も挟むことをいい、運動習慣のない人にも取り入れやすいというメリットがあります。

先に「30分ごとに5分歩く」ことが健康(血糖値や血圧改善)によいという研究結果を示しましたが、大事なのは、座りっぱなしを解消するために、少しでも体を動かすことです。

具体的には、電話は立って受ける、オンライン会議の前後にスクワットを5〜10回行う、昼食後に数分だけでも歩く、階段を1〜2階分だけのぼる、動画やテレビのCMや番組の切れ目には立って足踏みする、といった動きが挙げられます。

どれも地味な行動ですが、「座りっぱなしを断ち切る」という意味で十分な価値があります。

スキマ時間にエクササイズ

大切なのは、無理して完璧を目指さないことです。

「今日は30分歩けなかったからゼロ」ではなく、「午前に2分、午後に3分動いた」と積み上げていくポジティブな発想のほうが、長続きします。運動着に着替える必要も、ジムへ行く必要もありません。生活のスキマにちょっとしたエクササイズ・スナックを入れる、それだけで十分な出発点になります。

最新研究が示すメッセージは明快です。

「運動不足」とは別に、「座りっぱなし」もそれ自体が独立した健康リスクです。しかもその対策は、立派な運動計画を立てることよりも先に、1日の中で座りっぱなしでいる時間を削り、動く活動を少しずつ増やすことから始まります。

それだけでも、体は思った以上に変わっていく可能性があることを知っていただければと思います。