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中小企業の脱炭素 〜事業成長と環境を両立する経営戦略〜

中小企業の脱炭素戦略、重要となる実践アプローチとは BCGが解説(2ページ目)

最終更新日: 2024年09月24日

日本独自の施策が必要

企業の脱炭素への取り組みについて、「私たちは『守りと攻めの脱炭素』と表現しています」と森原氏。自社の排出量を算定し、削減目標を立てて実行するといった行動が<守り>。対して<攻め>は、脱炭素を商機と捉え、現在の事業以外に再エネ事業など新たな事業を展開するといった活動を指す。中小企業においては、<守り>についてもまだ一部の企業にとどまっており、投資が必要な<攻め>の脱炭素経営については、踏み込めていない企業がほとんどといった状況だ。

そうした中でも、先行して取り組みを進める企業もある。

BCGのプロジェクトリーダーで、C&Sグループの中でも特に中小企業を専門に支援している石津氏は次のように解説する。

「ある非鉄金属メーカーは、先行して脱炭素に取り組んだ結果引き合いが増え、新たな取引先とのビジネスが広がっています」と話す。製造工程だけでなく、再生材の使用なども進め、取引先も巻き込んで脱炭素に挑んでいるという。また、カーボンニュートラルの達成に向け、100社にのぼる企業と協定を結び、地域全体の取り組みへと発展させたローカル企業もある。しかしながら、脱炭素経営の進む欧州諸国や新興国などに比べると、中小企業全体の気候変動への意識、感度は一歩遅れていると言わざるを得ない」

また、森原氏は「先行する欧州諸国だけでなく、中国など新興国でも消費者の意識や購買行動が変わってきており、自社のビジネスを考える上でも、脱炭素に取り組むことによるブランディングが必須となってきています」と語る。

中小企業の比率が高く細分化している日本では、特に、経営体力が十分でない中小企業が諸外国に比べて多い。

「こうした中で中小企業の脱炭素を推進していくには、地方自治体や金融機関との連携を含め、日本なりの施策を進めていくことも重要です。特に、零細企業でも取り組みやすいような敷居の低いメニューを、国や自治体として考えていく必要があるかと思います」(森原氏)

脱炭素経営を差別化の1つの軸に

自社の売上や利益を考えた場合、中小企業にとって、脱炭素への取り組みは大きなチャンスになるといえる。

「インフレ環境下でのコスト削減競争には限界がある。マーケットでの差別化を考えた場合、中小企業にとって、脱炭素やサステナビリティへの先行した取り組みが1つの切り口となります」(森原氏)

加えて、オーナー企業の形態をとることが多い中小企業は、経営の意思決定が迅速で、経営者が本気になれば変わる企業が多い。脱炭素は、中小企業にとっては大きな投資となるが、経営者が腹をくくれば動くことができる環境にある。

「新たな差別化の軸ができ、決断次第で先行できるという状況から、踏み出してしまえば相応のポジションを取れる可能性は高い。中小企業こそ、脱炭素経営に今取り組むことで、大きなチャンスをつかむことができるのではないでしょうか」(森原氏)

中小・零細企業が脱炭素への取り組みを進めていく場合、まず、コスト削減・利益率向上に繋がる部分から取り組むのが得策だ。長期の削減計画を考え始めると“全方位での取り組みが必要”という強迫観念に駆られがちだが、経営上メリットのある部分からまずは始めるといったアジャイルな発想が重要だ。

一方で、自社のみではリソースに限りがあることも事実であり、業界内の中小企業同士、あるいは地域の自治体や金融機関などを巻き込んで、皆で協調して取り組むことも大事な要素の1つになっていく。

「地域と一緒に広がりを持って取り組むことが、地場産業の活性化や地域コミュニティづくりのきっかけにもつながっていくと考えます」(石津氏)

今後、中小企業を取り巻く環境は、脱炭素を促す方向へと間違いなく進んでいく。

「3年後に振り返って見たとき、業界や地域で先行した中小企業と、そうでない中小企業には、大きな差が開いているでしょう。いまをチャンスと捉え、出来る限り早く動くという意識を持つことが、大事になっていくと思います」(森原氏)

森原 誠氏 石津 朝弘氏
森原 誠氏
ボストンコンサルティンググループ
マネージング・ディレクター&パートナーボストンコンサルティンググループ
プロジェクトリーダー
石津 朝弘氏
ボストンコンサルティンググループ
プロジェクトリーダー