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脱炭素社会構築に向けた経営戦略-脱炭素社会のビジネスチャンスとリスク

最終更新日: 2025年10月27日

トランプ大統領が就任直後にパリ協定を脱退し気候変動対策予算を削減しようが、地球は温暖化している、と感じる日々が続きます。これを書いているのは9月上旬ですが、今日も最高気温は35度を超え猛暑日となりました。東京の今年の猛暑日はこれまで通算29回となり、統計開始以来の記録を更新しました。東京のみならず日本各地で、また全世界的にも同様のニュースは珍しくありません。

23・24年度の世界平均気温、連続更新

世界の平均気温の上昇が止まらない 画像はイメージです(出所:PIXTA)

2023年度、2024年度の世界各地の平均気温は、1850年頃産業革命以来の記録を連続して更新しました。熱中症についても、数年前からほぼ毎日熱中症警戒アラートが自分のスマホに届くようになり、学校や多くの職場では対策が進められました。それでも図1のように熱中症による死者数は増え続けており、2000年(H12)頃は200人前後であったものが、2020年(R2)頃は1000人前後と恐ろしいことになっています。

また線状降水帯の頻発により短時間で大量の雨が降るようになり、貯水、下水道施設が対応しきれず洪水、浸水被害等も多発しています。一方で、何日も降雨がない日が続き、乾燥のため山火事となり、消防隊があらゆる手段を使っても1週間以上消火できない光景が各地で頻発するようになりました。

これら天候不順による農業被害も深刻です。今年は、コメ不足によるコメ価格高騰が社会問題になりましたが、そもそもは地球温暖化による気象の極端化が原因です。このように、毎日のニュースの相当部分が地球温暖化に起因していることに気づかされます。

熱中症による死亡者数は増加傾向にある(出所:環境省)

2050年までにネットゼロ、壮大な計画

このような時代に、我々はどうしたらよいのでしょうか。

日本を含めた世界では、2050年カーボンニュートラルを目標にしています(図2)。すなわち、地球温暖化の原因であるCO2等温室効果ガスの大気排出を2050年までにネットゼロにする、壮大な計画を持ち、産官学住各プレーヤーに協力を求めています。日本政府はグリーントランスフォーメーション(GX)戦略と法律を2023年に成立させました。2026年からは同法に基づく排出量取引制度が開始されます。

日本は2050年のカーボンニュートラル実現に向け、産官学で対策に取り組んでいる(筆者作成)

世の困りごとを解決する機会=ビジネスチャンスが拡がっている

企業人にとっては、これら世の中の困りごとを解決する機会=ビジネスチャンスが拡がっています。太陽光・風力発電等の再生可能エネルギーを開発・提供する事業、ペロブスカイトなど新素材開発、省エネにつながる断熱性能向上の技術開発、またそれらを利用した住宅・オフィスの提供、冷暖房機器の効率化、自動車の低炭素化、自動運転含む新モビリティの提供、核融合等の新エネルギー開発、農林水産業の生産効率化、CO2排出量の見える化、クレジット認証、関連のコンサルタント業、教育啓発ビジネス、など枚挙にいとまがない状況です。

脱炭素の先行プレーヤーは果実を得て、遅れるプレーヤーはリスク高まる

これらのニーズは人類が温室効果ガス排出ネットゼロを達成するまで、長期であり続けます。消費者、従業員、株主等のステークホルダーからは、ESG経営が叫ばれ、企業は、環境対応を含めた非財務情報の開示を求められる時代です。先行プレーヤーは果実を手にして、遅れるプレーヤーはリスクが高まることになるでしょう。行政人は、住民や企業の声を聞きつつ脱炭素社会への変革を導く制度やルールを構築するほか、地域合意に繋げる不可欠な役割が求められます。

今回の講座では、筆者は、「脱炭素社会構築に向けた経営戦略-脱炭素社会におけるビジネスチャンスとリスクとは-」と題して、GX推進法など関連政策や脱炭素にかかる技術動向、サスティナブル経営の先進企業の動向等を概観し、今後求められる経営戦略や都市政策について提示します。それらを基に、受講者は、ご自分の経験とポジションを生かして今後何ができるのか、を一緒に考える機会にできればと存じます。

著者プロフィール

東京都市大学都市生活学部 都市生活学科 教授 菊池 武晴

日本政策投資銀行にて、地域振興、環境・CSR、再生可能エネルギー投資、イノベーション等を担当後、福井工業大学経営情報学部教授を経て、2025年4月より現職。研究テーマは、サスティナビリティ経営、再生可能エネルギーの地域経済活性化効果、地域公共交通問題。