米国とベネズエラの関係が緊迫化している。米国に流入する不法移民や麻薬への対策が不十分であることなどを背景に、米国がベネズエラへの軍事圧力を強めていることが主因である。これまでも見てきたように、エネルギーと地政学は切り離せない表裏一体の関係にある。
米軍のベネズエラ石油タンカー拿捕などで緊張高まる
米軍は2025年9月上旬以降、ベネズエラから麻薬を運搬しているとみなした船を爆撃。11月下旬には、米国政府がベネズエラ周辺空域の封鎖を各国の航空会社に警告した。12月に入ると、トランプ大統領が地上攻撃を間もなく開始すると発言したほか、米軍がベネズエラ沖で石油タンカーを拿捕するなど、両国間の緊張は一気に高まっている。
米国の攻撃がベネズエラの石油供給を阻害するとの懸念が強まっているが、原油市場への直接的な影響は限定的となる見通しである。ベネズエラは世界最大の原油埋蔵量を誇るものの、近年の政治・経済情勢の混乱などから開発投資が進んでおらず、生産量は世界供給の1%未満に過ぎない(図表)。世界の石油需給バランスと価格の関係に基づく試算によると、仮にベネズエラの生産がゼロになったとしても、原油価格の押し上げ効果は3ドル程度と小さい。
パナマ運河に影響及べば、原油上昇圧力高まる
ただし、ベネズエラの周辺国における石油生産や海上石油輸送の要衝であるパナマ運河に影響が及ぶ事態に至れば、価格上昇圧力が高まる公算が大きい。仮に、ベネズエラに加えて、隣国のガイアナやコロンビアの石油供給が途絶し、パナマ運河の石油輸送もゼロとなる場合、原油価格の押し上げ効果が12ドルに拡大すると試算される。
日本はベネズエラから石油を輸入しておらず、同国の供給が途絶した場合に受ける悪影響は軽微である。もっとも、原油価格が12ドル上昇するリスクシナリオでは、消費者物価が+0.2%ポイント上振れ、実質GDPが▲0.1%ポイント下振れる可能性がある。
暫定税率廃止などの政策効果、打ち消されないか注意必要
足元では、物価高対策を主眼とする2025年度補正予算が国会で成立し、年末にはガソリンの減税(暫定税率の廃止)が実施されるなど、物価抑制による景気浮揚への期待が高まっている。しかし、米国がベネズエラを攻撃するなど地政学上のリスクが生じ、原油価格が高騰する事態に至れば、こうした政策効果が打ち消されかねない点に注意が必要である。