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蓄電池、ペロブスカイト、自動車…政府の分野別GX投資戦略を読む

最終更新日: 2026年4月24日

ペロブスカイトなど次世代型太陽光はGX戦略の重点分野の一つだ 画像はイメージです(出所:PIXTA)

化石燃料中心だった経済・社会・産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、エネルギーの安定供給・経済成長・排出削減を目指すGX戦略実現に向け、政府は2025年末、自動車や蓄電池、ペロブスカイトをはじめとする次世代型太陽光発電など、16分野の「分野別投資戦略」を改定した。

2026年度から日本版の排出量取引制度「GX-ETS」が本格始動するのに合わせ、20兆円のGX移行債活用による先行投資など10年間で150兆円規模のGX投資実現を目指す。戦略の概要と展望を分析する。

16分野の「分野別投資戦略」 GX移行債を有効活用

政府は10年間で150兆円規模の官民投資を呼び込むための「成長志向型カーボンプライシング構想」を掲げている。その投資促進策の柱の一つが、GX経済移行債の有効活用である。政府は移行債活用に関する基本原則や考え方を示し、鉄鋼、化学など16分野ごとにGXの方向性と投資促進策等を取りまとめた「分野別投資戦略」を改定した。

政府はGX移行債を活用し、20兆円規模の先行投資支援を進める(出所:経産省)

脱炭素と経済成長の両立目指す

政府が定めた重点16分野は鉄鋼、化学、紙パルプ、セメント、自動車、蓄電池、航空機、SAF、船舶、くらし、資源循環、AI・半導体、水素等、次世代再エネ(ペロブスカイト太陽電池、浮体式等洋上風力、次世代型地熱)、原子力・フュージョンエネルギー、CCS(CO2の回収・貯留)。いずれも脱炭素と経済成長の両立を目指すための分野だ。

鉄鋼・化学

鉄鋼の投資戦略は、大型電炉転換や還元鉄の確保・活用といった製造プロセス転換のための投資、水素還元高炉・水素直接還元の本格的な社会実装に向けた取り組み、水素還元高炉の2040年代頃の実装等に向けた研究開発、確立された脱炭素化技術の実装投資が中心となる。化学分野では、アンモニアなどへの燃料転換の促進、ケミカルリサイクルやバイオ原料の導入製造プロセスへの転換投資(原料転換)などが主となる。

自動車・蓄電池

EVの導入が思うように進んでいない自動車業界に対しては、思い切った先行投資計画によってGX投資の促進を狙う。電動車開発・導入、電動車に必要な充電・水素充てん設備の整備、合成燃料・バイオ燃料等の脱炭素燃料の開発、製造工程の脱炭素化に向けた設備投資の促進に重点投資。乗用車・商用車の開発支援、導入補助、蓄電池などの電動化に必要な戦略物資の国内立地支援、国内生産・販売量に応じた税制措置、充電設備の整備補助などを想定している。

蓄電池産業に対しても大規模な投資戦略を描く。蓄電池の国内製造基盤の確立、全固体電池の本格実用化に向けた技術開発の加速、電動車などの普及促進に関し、支援策や補助を手厚く講じる。

自動車産業に対してはEVの開発促進に加え、購入支援策などにも取り組む(出所:経産省)

次世代型太陽電池、洋上風力など

ペロブスカイトなどの次世代型太陽電池における分野別投資戦略は、2025年度の事業化、その後の更なる性能向上のための研究開発、様々な業種・分野における導入・需要サイドと連携した大規模実証、サプライチェーン構築に向けた大規模投資、需要支援を通じた初期需要創出など。次世代太陽光、洋上風力発電などを含めた次世代再生可能エネルギー分野全体では、2023年から10年程度で官民投資額約31兆円を想定している。

CO2排出削減と産業競争力強化

GX実現のためには、CO2排出量の多い産業部門に対する取り組みが不可欠になる。発電事業などのエネルギー部門のほか、電気・熱配分後排出量の多くを占める鉄・化学などの産業部門、運輸など国民の生活に直結する部門などにおける排出削減の取り組みも求められる。こうした各部門の排出削減を効果的・効率的に実現しながら、産業競争力強化・経済成長につながる取り組みに対して、GX経済移行債を活用した投資促進策を実行する。

政府はGX移行債などを活用した先行投資支援とカーボンプライシング(CP)を含む規制・制度の確立がGXを進める両輪になると期待している。成長志向型CPは先行投資支援の裏付けとなる将来財源になり、GX関連製品・事業の競争力を高めるとの考えからだ。

GX-ETS本格稼働に合わせたGX投資促進

2025年5月に改正GX推進法が成立し、2026年度からはGX-ETSが本格稼働する。企業がGXに取り組みやすいよう、当初のCPは低く抑えられる見通しだが、GX関連製品・事業の競争力を高めるため、市場創造に向けた規制・制度整備に合わせる形でCPの段階的引上げが行われる。政府は民間がGX投資に果敢に取り組む事業環境を「予見性」をもって整備する。

民間の先行投資を加速させるためには、初期投資支援と生産段階でのコストが高い戦略分野の投資促進を組み合わせて実行に移す必要がある。今回の分野別戦略策定は、実行のための布石といえる。この戦略が絵に描いた餅とならないよう、官民一体となった実行体制の確立が急務である。

【参考】