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電力自由化10年 現状と課題(上)新電力シェア2割 価格抑え多様なメニュー提供

最終更新日: 2026年5月25日

電力自由化は再生可能エネルギーの比率も押し上げた 画像はイメージです(出所:PIXTA)

2016年4月に開始された電力小売の全面自由化から10年が経過した。この改革は、電力会社による地域独占体制を打破し、競争を通じて「電気料金の最大限の抑制」と「需要家の選択肢拡大」を実現することを目指してきた。10年という節目を迎え、日本の電力市場は新電力のシェアが2割になり、再生可能エネルギーの比率が高まるなど成果が上がりつつある。電力システム改革も含めた電力自由化の現状と課題を検証する。

拡大する市場参入と新電力の存在感

電力自由化以降、多様な業種からの参入が相次いだ。経産省によると、小売電気事業者の登録数は2025年1月末時点で登録事業者数は747事業者に達している。一時期の急増を経て足元では横ばい傾向にあるものの、実際に供給実績がある事業者は500者(2024年10月時点)となった。

新電力の市場シェアも着実に伸びている。経産省によれば、全販売電力量に占める新電力のシェアは2024年10月時点で約19.2%と約2割になった。特に家庭用を含む「低圧分野」では、シェアが約25.6%まで伸びており、4世帯に1世帯以上の世帯が新電力を選択している計算だ。

電力自由化で新規参入した事業者の数は700を超えた(出所:資源エネルギー庁)

需要家、コスト削減と効率化にメリット

自由化は、企業や家庭に具体的な経済的メリットをもたらした。一つは電力コストの抑制である。必ずしも電力自由化の影響だけではないものの、燃料輸入価格高騰時などの特殊な局面を除き、自由料金メニューは大手電力が電力自由化の前から提供している電気料金プランの「経過措置料金(規制料金)」よりも安価な水準で推移している。大手電力同士の競争も生まれ、価格抑制に一定の成果があったと評価されている。

コスト削減と電力メニューの多様化に伴い、需要家の創意工夫も進んだと言えそうだ。病院や工場などの大規模需要家では、先物市場で価格を固定しつつ、スポット市場の価格変動に合わせて設備の稼働時間を調整するなど、自らの努力で電気代を抑える「効率化」の取り組みが広がっている。家庭向けでは、「ガス・電気セット割」や通信・ポイントサービスとの連携など、需要家のライフスタイルに合わせた多彩なメニューが提供されている。

大手電力の広域展開と競争の激化

電力自由化によって各地の大手電力会社による地域独占が崩れたことで、大手電力側の取り組みにも変化が生じた。大手電力が従来の供給エリアを越えて電力を販売する「域外進出」が進み、資源エネルギー庁によると域外進出の比率は2024年10月時点で約3%となった。自由化によって競争原理が働くようになり、サービスが多様化・高度化していることは間違いない。

環境価値への関心の高まりと電気料金上昇幅の抑制

電力自由化によって効果が見られたのはコストやサービスだけではない。価格以外の価値としての「環境価値」の関心が高まったことは、脱炭素化を進めるにあたっての大きな成果といえる。多彩な再生エネプランの普及により、2024年度の再生可能エネルギー比率は約23%まで上昇。環境意識の高い需要家向けに「実質再エネ100%」などをうたうプランを提供する小売事業者も増え、電力の脱炭素化を後押ししている。

電力自由化の10年は約500社の供給実績とともに、2割の新電力シェア、多彩なセットプランといった「選択の自由」を社会に定着させた。電力中央研究所などによると、国際比較で見ても日本の電気料金上昇幅は他国より小さく抑えられており、競争の効果は着実に表れているといえる。

電力自由化後、日本の電気料金は国際的に見ても比較的抑制されている(出所:資源エネルギー庁)

課題は燃料価格高騰対応と発送電分離

一方で、課題もある。2022年のロシアによるウクライナ侵攻を契機とした燃料価格高騰によって一部の新電力が市場から撤退し、混乱が生じた。自由化のメリットを維持しつつ、非常時における安定供給を担保するルールの導入が必要になる。

また、2020年に実施された発電から小売までを担う大手電力事業者から送配電部門を分社化する「発送電分離」についても、「中途半端だ」という声がある。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は日本の発送電分離について「電力会社が子会社に分離するだけの『なんちゃって分離』だ」として、大手電力による独占体制が事実上続いていると批判している。

2026年に入っても、先の見えないイラン情勢などエネルギーの動向に大きな影響を与える出来事が相次いでいる。電力を巡る安定供給体制を確立することが極めて難しくなっている中、電力自由化の「真の成果」が得られるかどうかが問われている。