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パラボラアンテナの原理で太陽熱を集約する「ディッシュ式太陽熱発電」

最終更新日: 2026年5月25日

今後普及が期待されるディッシュ式太陽熱発電(出所:米エネルギー省)

「環境ビジネス」は全人類の運命を左右するテーマだけに、世界では様々なイノベーションが考案され、実行されている。このリレー連載では「脱炭素」「持続可能な社会」「気候変動」「再生可能エネルギー」から、「食品ロス」「ごみ削減」に至るまで、世界各地の様々な取り組みを紹介していく。今回はパラボラアンテナのような原理が特徴の「ディッシュ式太陽熱発電」だ。

微量な電波を集めるのに便利な「パラボラアンテナ」。それとほぼ同じ原理で「太陽熱」を集めるのが今回紹介する「ディッシュ式太陽熱発電」(別名「ディッシュ/スターリング式太陽熱発電)である。たくさんの鏡をパラボラアンテナのように皿(ディッシュ)状に並べることで、反射する太陽熱をある一点に集約させるものだ。

「タワー式太陽光発電」との違いは?

その原理は以前紹介した「タワー式太陽光発電」と近い。だがこちらのほうがより我々がイメージする「パラボラアンテナ」や「パラボラ式望遠鏡」に形状は似ている。

また直径数百メートルから何キロメートルというレベルの巨大プラントである「タワー式」と比べると、直径数メートルとずっと小型だ。

また「タワー式」は太陽熱で「タービンを回す」というスタイルなのに対して、こちらは外部から熱を加えたり冷却したりすることで動かす「スターリングエンジン」を用いる形式だ。

小型だが狭いスペースでも設置可能なのが「ディッシュ式太陽熱発電」の強みだ(出所:米エネルギー省)

省スペースで移動も可能

「タワー式」と比べて小型である分発電量は少ないが、狭いスペースでも設置可能。「何もないまっ平らな広い場所」が求められる「タワー式太陽光発電」と異なり、太陽光が当たるところであればほぼどこでも設置が可能。

つまりコスト的に見合わないという理由で送電が困難な山間部や離島などに設置して、発電を「現地」で行うことも可能となる。

さらに言えば「設置」すらせず、どこからでも通信できるようにパラボラアンテナを搭載するテレビ局の「中継車」のように、「移動発電車」的なものに応用することも期待されている。一時的に電力がなくなった、または足りなくなった場所、つまり災害現場などでは大いに活躍することだろう。

「集光型太陽熱発電」の市場規模、2030年ごろに百億ドル前後との予測も

民間の各種調査などによると、「ディッシュ型」も含めた「集光型太陽熱発電」の市場規模は、2030年前後には百億ドル前後に達するという。今後の成長予想は研究者によって「年約15パーセント~約25パーセント」くらいと幅があるものの、少なくとも今後5年はこのような高成長を続けるとみられている。

課題は「初期費用」と「天候不良への対応」

ただ、もちろん問題がないわけではない。その最たるものが「導入コストの高さ」であることは、多くの自然エネルギー(再生可能エネルギー)発電と共通している。さらに「発電量が天候に左右されること」も他の太陽熱または太陽光発電と共通の課題だ。

とはいえ国土が狭く、そのうち山間部が約7割を占め、人口密度も高い日本。地上では直径数キロレベルの巨大プラントを造りづらい。そしてまた残念ながらこの国は「災害大国」である。そんな実情を考えると、小さくかつ移動型の制作も可能な「ディッシュ式太陽熱発電」に今後大いに期待したい。

著者プロフィール

オーストラリア在住ジャーナリスト・海外書き人クラブ 柳沢 有紀夫

日本にある外資系広告会社でコピーライターをした後、オーストラリアに移住。同国でフリーランスのライターに。2000年に海外書き人クラブを結成し、以来お世話係を務める。海外書き人クラブの仲間たちとの共著も含め著書多数。ペンネームの竹内雄紀名義でも小説を出版。