脱炭素コンテンツ

環境ビジネスオンライン

「鉄道レールの間」に太陽光パネル! 環境も景観も破壊をしない裏ワザ

最終更新日: 2026年6月24日

スイスでは鉄道のレールのすき間に太陽光パネルを設置し、実用化に向けた実証が行われている(出所:サンウェイズ社)

「環境ビジネス」は全人類の運命を左右するテーマだけに、世界では様々なイノベーションが考案され、実行されている。このリレー連載では「脱炭素」「持続可能な社会」「気候変動」「再生可能エネルギー」から、「食品ロス」「ごみ削減」に至るまで、世界各地の様々な取り組みを紹介していく。今回は電車のレールの間に太陽光パネルを設置するスイスの「エコ鉄道」だ。

使われていない「線路のすき間」を有効活用

再生可能エネルギーは当然必要だが、一方で「環境破壊」や「景観破壊」につながる恐れがある「諸刃の剣」でもある。太陽光パネルによる景観破壊、そして森林を伐採することによる山崩れといった環境破壊に対しては、十分考慮しなければならない。

その点、今回紹介するスイスのサンウェイズ社が見つけ出した太陽光パネルの設置場所はとてもユニーク。「環境破壊」や「景観破壊」につながる心配がない。というのも鉄道の2本のレールの間、もともとコンクリート製の枕木とバラスト(砕石)が敷き詰められているだけで、それ以外には何も利用しておらず、かつまわりからはほぼ見えないところに設置するからだ。

この線路のすき間を有効利用するというアイディアは秀逸である。だが一つ大きな問題があった。

鉄でできた線路は夏に熱で膨張し、逆に冬には収縮する。そして線路の上を走るのは重量級の列車たち。つまり定期的な点検と補修作業が不可欠だ。ところが太陽光パネルが敷き詰められていたのではそれらが思うようにできない。

専用列車で線路の太陽光を機械的に着脱可能だ(出所:サンウェイズ社)

専用列車で機械的に脱着可能

そこで考えられたブレークスルーが、太陽光パネルを「脱着可能」にするという方法である。しかも一枚いちまい手作業で置いたり外したりするのではなく、何枚もつなげた太陽光パネルを専用の列車に載せて自動で敷き詰めて行ったり、逆に回収したりするのだ。この「機械化」により時間が短く済むだけでなく、余計な労働力を使う必要がないのも大きな魅力だ。

これなら定期点検や補修作業の前にパパッと片づけられ、それらが終わればサッと敷きなおすことができる。

サンウェイズ社の発表によると、1つの車両で1日あたり1000平方メートル分敷き詰められるという。スイスは主に線路間が1435ミリメートルの標準軌道を採用しているので、仮にパネルの幅が1250ミリメートルとすると、1日に800メートル分敷いたり片づけたりできるという計算になる。

すでに諸外国でもパイロットプロジェクトが

サンウェイズ社は2021年に開発をスタートさせた。現在はまだパイロットプロジェクト(実証事業)の段階で、2025 年4月24日、線路上に100 メートルの太陽光パネルを設置した。この試作品は時速150キロメートルの高速鉄道の通過を想定して設計されているという。

そしてこのパイロットプロジェクトはスイスだけでなくフランス、ベルギー、カナダ、韓国でも始動し、中国、メキシコ、米国でも潜在的なパートナーとの協議が始まっているという。2027年にも実際の市場参入を目指しているとのことだ。

スイス中の鉄道に敷き詰められればおよそ20万戸分、または公共交通機関の30パーセント分の電力が供給できるという。

ちなみに同社によるとヨーロッパだけでも26万キロメートル以上、世界全体では100万キロメートル以上の鉄道網が存在する。

「線路は続くよどこまでも」ではないが、「夢は広がるどこまでも」だ。

著者プロフィール

オーストラリア在住ジャーナリスト・海外書き人クラブ 柳沢 有紀夫

日本にある外資系広告会社でコピーライターをした後、オーストラリアに移住。同国でフリーランスのライターに。2000年に海外書き人クラブを結成し、以来お世話係を務める。海外書き人クラブの仲間たちとの共著も含め著書多数。ペンネームの竹内雄紀名義でも小説を出版。