「環境ビジネス」は全人類の運命を左右するテーマだけに、世界では様々なイノベーションが考案され、実行されている。このリレー連載では「脱炭素」「持続可能な社会」「気候変動」「再生可能エネルギー」から、「食品ロス」「ごみ削減」に至るまで、世界各地の様々な取り組みを紹介していく。今回は駐車場やゴミ箱を環境配慮型の社会インフラに一変させた米国の首都ワシントンにおけるユニークな取り組みを紹介する。
米国の首都ワシントンD.C.では、これまで単なる設備とみなされていた「駐車場」や「ゴミ箱」を、最先端のデジタル技術と融合させて次世代の都市インフラへと変貌させる取り組みが活発化している。
首都圏地下鉄4駅の駐車場にソーラーカーポート網
2019年、首都圏の地下鉄とバスを運行する「ワシントン首都圏交通局」は、地下鉄駅の広大な平面駐車場を太陽光発電の拠点に転換する計画を発表。首都圏の地下鉄4駅の駐車場にこの地域最大級のソーラーカーポート網が設置された。この4駅の青空駐車場は、車を駐車する以外の用途がなかったが、上空の莫大な空きスペースをエネルギー創出装置へと変えることで、新たな価値を生み出している。
ソーラーカーポートは、新たな土地を取得する必要がなく、既存インフラの上部空間を活用できるため、都市部で再エネ導入余地が限られる地域でも発電量を増やせるのが利点だ。日本でも再生可能エネルギー活用の一手として注目されているソーラーカーポートにより、4駅の駐車場は、約1100世帯分の年間電力使用量に相当する電力を生み出している。
発電した電力は地域の送電網へ送られ、近隣の家庭や商業施設で利用されている。周辺住民は、クリーンな電力を使いながら電気代の割引を受けられる仕組みになっており、地域社会の脱炭素と経済的支援を同時に実現するモデルとして評価されている。
センサー付きのスマートゴミ箱を「賢く置く」
一方、ワシントンD.C.では、センサー付きの高機能「スマートゴミ箱」を活用し、ゴミ箱をなくすのではなく「賢く置く」ことで管理する取り組みも活発だ。東京のように設置数を「減らす」アプローチとは対照的だが、データに基づき管理するインフラとして位置づけることで、収集効率の向上や環境負荷の低減を図っている。この取り組みは、行政主導で首都全域へと急速に広がっている。
具体的には、内部のセンサーでゴミが満杯だと感知すると、フタに設置された太陽光発電システムの電力を使い、ゴミが自動圧縮される。これにより、通常のゴミ箱の約5倍の容量を収容できる。ゴミ箱は完全密閉型なので、ごみの溢れ出しや害虫の発生を防ぐといった都市の美観と環境対策の両立にも成功している。
また、生ゴミ専用のスマートゴミ箱も導入されている。電子ロック付きで、登録利用者のみが24時間生ゴミを投入できる仕組みだ。これにより利便性を高めると同時に、分別の質も維持している。
数カ月で68トン以上の生ゴミ削減
この生ゴミ専用スマートゴミ箱は、実証実験の段階で、開始わずか数ヶ月で68トン以上の生ゴミを埋め立て地から削減することに成功。これは単なる廃棄ではなく、都市内の資源循環を管理するインフラとして機能している。
一方、このゴミ箱配置を含む首都全体の生ゴミ削減プログラムでは、堆肥化のために累計約5000トン以上の生ゴミを回収している。これは、ガソリン車約500台を道路から排除すること、あるいは3万5000本の木を植えて10年間育てることと同等の効果に相当する。
日本が学べる「賢く置く・使う」視点
日本でも大型商業施設や駅前駐車場、マンション共用部など未利用空間は数多い。また、ごみ収集の人手不足は多くの自治体で深刻化している。ワシントンD.C.の事例は、新たな施設を建設するのではなく、既存インフラにデジタル技術を重ねることで賢く置いて使い、都市機能を高度化できることを示している。