世界有数のビッグテック企業・ECサイト運営会社であるアマゾン。その日本法人であるアマゾンジャパンが、持続可能な社会の実現に向けたサステナビリティ戦略を加速させている。同社は地球規模の気候変動対策「The Climate Pledge(クライメット・プレッジ)」の共同設立者として、パリ協定より10年早い2040年までのネットゼロカーボン達成を掲げる。日本国内でも再生可能エネルギー導入や次世代型物流拠点など具体的な取り組みを進めている。
アマゾン、日本で25年以上の歴史
アマゾンが日本国内向けのサービス「Amazon.co.jp」を開始したのは2000年。米国本国、英国、ドイツなどに続き、世界でも早い段階で立ち上げられた。2025年には日本でのサービス開始から25周年という大きな節目を迎えた。
気候変動に関する制約、日本企業も署名・賛同
アマゾンがグローバルで進めるサステナビリティの根幹にあるのが、2019年9月に国際団体「Global Optimism」と共同で立ち上げた「The Climate Pledge(気候変動に関する誓約)」である。アマゾンはこの誓約の共同設立者であり、最初の署名企業となった。その内容は「2040年までに事業全体の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ(ネットゼロカーボン)にする」という目標を掲げた。この誓約には現在、世界中で670社を超える企業が賛同・署名しており、日本企業でもソニー、NEC、花王などが署名して共同での脱炭素化を推進している。
誓約を達成するため、アマゾンは世界各地で太陽光発電、風力発電、原子力発電といったカーボンフリーエネルギーへの莫大な投資を行っている。2024年まで5年連続で「世界最大の再生可能エネルギー購入企業」としての地位を維持。グローバルで展開する太陽光・風力などのプロジェクトは合計700件を超え、その発電総容量は40ギガワット(GW)以上に達している。
温室効果ガス排出量の削減においては、データ主導型のアプローチを徹底。AWSのテクノロジーを活用した「カーボンアカウンティングシステム」を自社内に構築する。によるトップダウンで全体の排出量を可視化するだけでなく、個々の建物やサーバーや配送にかかる排出量をプロセスベースで詳細に分析。効果的な削減施策を一部の拠点でテストし、成功したものを大規模に横展開していく手法を取り入れている。
アマゾンジャパンの再エネ国内調達
アマゾンジャパンも国内の地域事情に合わせた形でサステナビリティ施策を具現化している。まずは再生可能エネルギーの国内調達だ。アマゾンジャパンは国内の物流施設などの屋根に設置する「オンサイト型ソーラー」や大規模な「オフサイト型ソーラー」を組み合わせる。日本国内における再生可能エネルギーの調達規模で業界トップクラスという。
2021年には三菱商事と国内初となるコーポレートPPAに基づくオフサイト型太陽光発電プロジェクトを開始。さらに太陽光だけでなく、青森県六ケ所村ではコスモエコパワーと提携した陸上風力発電所を稼働させるなど 、国内の発電ポートフォリオの多様化を進めている。
環境配慮型の物流拠点、名古屋に開設
アマゾンジャパンの物流イノベーションを象徴するのが、2025年に名古屋市港区に新設された「名古屋みなとフルフィルメントセンター(名古屋みなとFC)」である。延床面積約12万5000平方メートルと西日本エリアで最大規模となるこの拠点には、最先端の省エネ技術とサステナビリティへの配慮が凝縮されている。
建物の壁面に太陽光パネルを設置する「壁面太陽光発電」をアマゾンの国内拠点で初めて本格導入した。さらに年間を通じて温度が一定である地中の熱を空調のアシストに利用する「地中熱空調システム」を採用。大規模な蓄電池も国内FCで初めて設置された。国際的な環境認証機関による「ILFIゼロカーボン認証」の日本第1号取得を見据えた先進的な物流施設だ。
「梱包」の工夫・改革
消費者が日々目にする「梱包」についても工夫や変革を重ねる。かつて「小さな商品が大きなダンボール箱に入って届く」という不満の声があったことを受け、同社は商品スキャンデータやカタログ情報を組み合わせた「自動梱包機」を導入。商品のサイズに合わせてロール紙をガシャンとカットして最適に包むことで、資材の削減と配送効率の向上(1配送あたりの温室効果ガス削減)を両立させた。
飲料水や電化製品など、メーカーの元々の箱が十分に頑丈である場合は、Amazonとしての追加梱包を一切行わず、商品パッケージに直接送り状ラベルを貼って配送する「Ships in Product Packaging(商品のパッケージでの発送)」プログラムを拡大した。
これにより、グローバルでは全配送の約12%が追加梱包なしで届けられている。2024年の世界全体での使い捨てプラスチック梱包削減率は、前年比で16.4%減少という高い実績を記録した。
生成AIとバリューチェーン全体へのアプローチ
アマゾンジャパン、アマゾン全体が今後見据えるサステナビリティの未来は、急速に普及が進む生成AIの活用と、その膨大なエネルギー需要への対応に集約される。AIの進化は大量の計算を必要とするため、「電力需要の急増」という環境面での大きな課題を突きつけている。
アマゾンはこうした難題をテクノロジーの効率化とさらなるカーボンフリーエネルギーの拡充によって乗り越える方針だ。AWSのデータセンターではハードウェアや冷却システムの効率化を進め、データセンターのエネルギー効率を示すPUE(電力使用効率)で1.15という業界平均(1.25)を上回る数値を達成している。
また、自社開発のカスタムシリコン「AWS Graviton3」や「Trainium」を搭載したEC2インスタンスを提供することで、同等のパフォーマンスを維持しながら消費電力を最大60%削減、AIトレーニングのエネルギー効率を最大25%向上させるなど、ITインフラそのものの低炭素化を推し進めている。
生成AI活用とサステナビリティの課題解決を両立
一方、生成AIは「サステナビリティの課題を解決するための強力なツール」でもある。アマゾンジャパンは膨大なバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量(スコープ3)の把握や断片化したESGデータの統合・分析にAIを活用している。
複雑なサステナビリティ規制基準や100ページを超える専門文書の検索・要約にLLM(大規模言語モデル)を導入し、洞察を得るまでの時間を大幅に短縮。AIを用いた需要予測と在庫管理の最適化によって物流の無駄を省き、水漏れの検知やエネルギー効率の自動最適化、商品の返品を減らすためのサイズ推奨AIなど、無数の環境課題をテクノロジーで解決しようとしている。
「サステナビリティは顧客至上主義の延長線上にある」。アマゾンのサステナビリティ責任者であるカーラ・ハースト氏が語るように、環境に配慮したソリューションは結果として消費者に優れた配送体験を提供し、コミュニティを強化する経済の原動力となる。2040年のネットゼロカーボン達成に向けたアマゾンジャパンの取り組みは、単なる企業の社会的責任にとどまらず、未来のビジネス価値創造に大きく影響するだろう。