今日から使えるAIの活用知識が身に付く
AIコラム第2回
前回は、「検索」だけでなく、仕事の困りごとを相談しながら考える相手としてAIチャットを使う方法をご紹介しました。今回は、その一歩先として、メールや報告書、議事録、申請資料などの文章作成にAIを活用する方法を見ていきます。
日々の仕事では、文章を書く場面が想像以上に多く見られます。取引先への連絡、上司への報告、会議後の議事録、社内への共有文。内容は頭の中にあるのに、いざ書こうとすると、書き出しで手が止まることはないでしょうか。
AIチャットは、完成文を代わりに書く道具というより、最初のたたき台を作る道具と考えると使いやすくなります。ここでいう「8割のたたき台」とは、そのまま提出できる完成原稿ではありません。構成ごとに整理され、必要な項目が並び、人が確認・修正しやすい状態のことです。
例えば、会議後に上司へ共有する報告書を作る場面を考えてみます。手元には、要点を書き留めたメモしかありません。白紙から文章を組み立てようとすると時間がかかりますが、AIチャットに「何のための文書か」「どの項目で整理したいか」を伝えると、見直しやすいたたき台を作れます。
入力例
あなたは中小企業の社内文書作成を手伝う相談相手です。以下のメモをもとに、上司に共有する報告書のたたき台を作ってください。目的は、会議内容を共有し、今後の対応を明確にすることです。項目は「要点」「決定事項」「確認事項」「今後の対応」に分けてください。情報が足りないところは「要確認」と書いてください。
メモ:
・問い合わせ対応に時間がかかっている
・納期確認、在庫確認、書類の再送依頼が多い
・よくある質問をまとめる案が出た
・来週、担当者ごとの問い合わせ対応件数を確認する
AIからの回答
【要点】
問い合わせ対応に時間がかかり、他の業務に影響が出ている。問い合わせの多くは、納期確認、在庫確認、書類の再送依頼。対応の負担を減らすため、よくある質問の整理を進める。
【決定事項】
・よくある質問(FAQ)をまとめる案を進める
【確認事項】
・FAQの作成担当者と完成時期(要確認)
・FAQのまとめ方と社内での共有方法(要確認)
【今後の対応】
・来週、担当者ごとの問い合わせ対応件数を確認する
このように依頼すると、AIはメモを文章に整えるだけでなく、項目ごとに整理し、足りない情報も示してくれます。まず見直す対象ができるため、文章作成の最初の負担を軽くすることができます。
AIチャットの便利なところは、最初の回答を見てから、さらに条件を追加できることです。上司が忙しい、取引先向けなので丁寧にしたい、社内共有なので短くしたいなど、読み手やその時の状況に合わせて追加で相談できます。
追加の入力例
上司が忙しいので、冒頭に3行の要約を入れてください。未決事項と今後の対応が分かりやすいように、少し短く整理してください。
AIからの回答
【要約】
・問い合わせ対応に時間がかかり、他の業務に影響が出ている
・よくある質問(FAQ)をまとめる方針を確認した
・来週、担当者ごとの問い合わせ対応件数を確認する
このように頼むと、文章の長さや見せ方を調整できます。取引先向けのメールなら「丁寧だが堅すぎない文面に」、社内向けの議事録なら「決定事項と担当者が分かる形に」などと伝えると、目的に合った文章に近づきます。
なかでも、毎日の仕事で一番試しやすいのはメールです。お礼、日程調整、資料送付の依頼など、短いメールほど、たたき台がある効果を実感しやすいです。
入力例
取引先に、打ち合わせ日程の変更をお願いするメールを作ってください。こちらの都合による変更のため、お詫びの一文を入れてください。候補日は8月20日と8月21日です。丁寧だが堅すぎない文面で、件名も3案お願いします。
メールの場合も、出てきた文面を見ながら「もう少し短く」「もう少し丁寧に」と追加で頼めます。宛名や日付、相手との関係に合わせた言い回しは、送る前に人が確認して整えましょう。
大切なのは、AIが作った文章をそのまま使うのではなく、自社の状況に合っているか、相手に失礼がないか、必要な情報が抜けていないかなどを人の目で見て確認して、おかしいと思った部分を修正することです。この確認と修正こそが、人にしかできない仕事です。
補助金などの申請資料でも、考え方は同じです。ただし、AIに申請書を丸ごと書かせてはいけません。AIに手伝ってもらうのは、あくまで「書く前の準備」です。
例えば、「この公募要領をもとに、申請前に確認すべき条件を整理してください」「事業計画書に書くべき項目を見出しだけで整理してください」とAIに相談しつつ、対象者、締切、対象経費、必要書類などの条件は、人が必ず公式資料で確認し、必要に応じて専門家や支援機関にも確認しましょう。そのうえで、自社の取り組みをどう説明するか、申請する内容を考えて決めるのは、人の役割です。
なお、文章作成でAIを使うときは、お客さまの氏名、社員の個人情報、未公開の売上や取引条件など、社外に出してはいけない情報は入力しないようにしましょう。また、AIの文章には誤りや不自然な表現が含まれることがあります。日付、金額、制度、条件のような契約に関わる重要な内容は、人が最後に確認することが基本です。
まずは、手元にある会議メモや報告メモを一つ選び、AIに「報告書のたたき台を作成してください」と相談してみてはいかがでしょうか。ゼロから書き始める時間を減らせるだけでも、文章作成の負担は大きく変わります。
次回は、お客さまに伝わる言葉をつくるために、AIを使ったターゲットの整理やキャッチコピー案、SNS投稿案を考える方法をご紹介します