BCP策定ガイド

01 BCPの基本

BCPの基礎知識
~まずはBCPの基本を知ろう~
BCPの基礎知識
近年、私たちの社会は予測困難な危機に直面する機会が増えています。国内では大規模な自然災害が頻発し、世界的な新型コロナウイルスの流行拡大は働き方やビジネスの形を一変させました。さらに、デジタル化の進展により、サイバー攻撃も企業規模を問わず深刻な脅威となっています。

こうした事態により、事業の中断や経済的損失、さらには廃業に至るケースも少なくありません。しかし、BCP(事業継続計画)を適切に策定していれば、被害を抑え、早期の復旧が可能です。

ここでは、BCPの定義や目的をわかりやすく解説し、その重要性と活用のポイントを紹介します。実際の事例も交え、「備えておけば守れた」と後悔しないためのヒントをお伝えします。
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BCPとは何か?
BCPとは「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の略で、企業がリスク発生時にも事業の中断を回避し、早期の復旧を実現するための手順を文書化した計画のことを指します。

従業員の生活の保障やサプライチェーン全体の維持、法人税の納付による地域貢献など、社会的な意義も大きいとされています。
BCPとは何か?
BCPの歴史
BCPの概念は、1980年代のアメリカでコンピューターの普及に伴うシステム障害対策として誕生しました。9.11同時多発テロによってその重要性が世界的に認識されましたが、日本では普及が遅れていました。

しかし、2011年の東日本大震災を機に多くの企業が被災・倒産したことから、自然災害対策としての側面を持つBCPが日本でも広く普及します。その後、新型インフルエンザや新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て、感染症対策やテレワークの普及に伴うサイバー攻撃への備えも、BCPの重要な要素といえます。

近年は、大規模災害時における従業員の帰宅困難者対策として、企業内での一時滞在や備蓄の推奨など、BCPの対象範囲は社会の変化とともに拡大し続けています。
BCPと防災との違い
防災は、災害が起きたときに被害を広げないための対策が中心です。一方でBCPは、災害に限らず、パンデミックやサイバー攻撃など、さまざまな社会的リスクに備え、事業を止めないことを目的とした取り組みです。

BCPと防災の最も大きな違いは、BCPが「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」といったリソースごとにリスク分析を行い、事業を継続するための対策を講じる点です。防災マニュアルが主に人的被害に特化しているのに対し、BCPは事業全体のリソースを守ることを目的としています。

製造・小売・サービス・ITなど、業種ごとに想定されるリスクは異なります。そのため、すべての企業に共通するBCPマニュアルは存在しません。
BCPの有無が経営を左右する
近年では、大規模な自然災害の頻発に加え、DXや電子化の進展によってサイバー攻撃のリスクも増大しており、BCP(事業継続計画)の重要性はかつてないほど高まっています。BCPは、企業が予期せぬ事態に直面した際、事業を継続し、顧客・従業員・社会からの信頼を守るための「生命線」といえる存在です。
BCPの有無が経営を左右する
自然災害やサイバー攻撃といった危機は、もはや「まれに起こること」ではなく、「いずれ必ず直面するもの」として認識すべきです。仮に突然の事態により業務が停止すれば、顧客へのサービス提供は中断し、これまで築いてきた信頼を失う恐れがあります。

また、売上機会の損失により収益が悪化し、従業員が将来への不安を抱え、離職につながる可能性もあるでしょう。さらに、社会インフラを支える企業であれば、その影響は社会全体に波及し、重大な社会的責任を問われかねません。

こうしたリスクに備えるための具体的な行動計画がBCPです。策定と運用を通じて企業はレジリエンスを高め、緊急時にも冷静かつ迅速に対応できる体制を構築することが可能になります。BCPの有無は、企業の危機管理意識や社会的責任への姿勢を示す重要な指標となり、顧客や取引先、地域社会からの信頼獲得にもつながります。

BCPは、企業が持続的に成長し、社会に貢献し続けるための必要なプロセスといえるでしょう。BCPの有無が取引に影響する場合もあり、企業の信頼性や競争力に直結するようになっています。

なかでも重要なのは、災害や障害発生後の事業復旧期間をいかに短縮するかという視点です。そのためには、「復旧目標時間(RTO)」「目標復旧時点(RPO)」を明確に定め、実行可能なBCPを構築することが重要です。

BCP策定の有無による結果の違いを、2つの事例から見ていきます。
熊本地震と大手自動車メーカー
日本を代表する大手自動車メーカーの事例は、BCPにおける「一時停止からの早期再開」を実現した成功事例です。熊本地震で被災したこのメーカーは日本国内の全工場を一時的に停止するという大胆な判断を下しました。一見逆説的ですが、この「停止」が迅速な復旧を可能にしたのです。

鍵となったのは、「選択と集中」の戦略です。このメーカーは事前に復旧に必要なリソースを整理しており、全工場を止めることで、被災した熊本工場に人的・物的資源を集中できました。まずは全社的に状況を判断し、重要拠点にリソースを集中。その結果、事業全体の早期再開が実現しました。

この事例は、BCPが「事業を止めない」ことだけでなく、「止め方」や「集中」によって「回復力を高める」戦略でもあることを示しています。
熊本地震と大手自動車メーカー
鬼怒川の氾濫と茨城県常総市役所
2015年に発生した鬼怒川の氾濫において、茨城県常総市役所が浸水し、約1,000人が孤立しました。

同市役所は新築であったにもかかわらず、非常用発電機が地下に設置されていたため機能せず、通信が麻痺。最終的には、自衛隊の衛星電話によってようやく連絡が取れる状況でした。業務継続に必要なリソース分析の不備が、インフラ対策の脆弱性を招いた事例といえるでしょう。