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第1回業務改善フロー業務の洗い出しと業務フローの整理

労働力不足や働き方改革など環境が変化していく中で、企業が成長や発展を目指すには、業務改善は避けて通れません。しかし、「何から始めたらいいのか」「どのように取り組めばいいのか」などが分からず、業務改善が進んでいかないこともあります。
まずは、業務改善が必要性とされる背景を理解し、自社の働く環境をチェックします。自社にはどのような業務があるのかを洗い出して、業務改善の第一歩を踏み出してみましょう。

業務改善の必要性

業務改革は必要な取り組みだといわれますが、なぜ、業務改善が必要なのでしょうか。業務改善は、企業が利益を上げるための取り組みでもありますが、労働生産人口の減少や働き方改革の推進など、企業をとりまく環境の変化に対応するためにも必要です。

労働生産人口の減少

自社で働く人の平均年齢が毎年高くなり、若返りできないことを悩む企業もあります。企業も少子高齢化による影響を受けています。15歳以上65歳未満の人口の減少が続いており、今後も働く人の数が増えないと、それぞれの企業で働く人の数も減っていきます。従業員不足の影響はどの企業でも直面している課題です。

育児休業取得後の女性や定年退職後の高年齢者など、働ける人には働き続けてもらうことで人手不足を補おうとどの企業も努力しています。しかし、新たに働き出す人数よりも退職する人が多くなっていくと働き手の数は減っていき、今の業務をより少ない人数で行えるように生産性を高める工夫が必要になってきます。この工夫が業務改善であり、企業は業務効率化をしなければならなくなっています。

働き方改革の推進

「働き方改革」の推進によって2019年に労働基準法が改正され、従業員の残業時間を適切に管理しなければならなくなり、残業時間にも上限ができました。例えば、従業員が休んだり辞めたりして人数が足りなくなったとき、他の従業員が労働時間を延ばせば仕事が終わるという場合でも、残業時間に制限ができたことで仕事が終わらなくなるということも考えられます。

また、働き方も多様化し、職場にはフルタイムの正社員、契約社員やパート社員など労働時間が異なる従業員が一緒になって働くことも増えてきました。
従業員が少なかったり、働く時間が短い従業員がいたりする中で仕事を終わらせるには、業務時間を短縮しつつ生産性を向上させる取り組みが必要です。そこで、業務改善の必要性が叫ばれているのです。

業務改善のメリット

働く人の数が減り、働く時間も短くなるという理由で業務改善は必要なことですが、必要性以外にもさまざまなメリットがあります。例えば、業務改善によって自社の商品やサービスをお客さまに数多く提供できるようになれば、売上が伸びます。また、自社のムダを省き、材料費を減らすことなどができれば、コスト削減ができます。さらに作業ミスが減らせれば自社商品の品質がアップし、お客さまにも喜ばれます。労働期間が短縮されて労働環境が良くなれば、その企業で働きたいという人も増えるでしょう。業務改善には、このようにさまざまなメリットがあるのです。

自社の働く環境をチェック

「どんな業務改善を行えば効果があるのか」と悩んでしまうこともあるでしょう。以下に【働く環境のチェックシート】を用意しましたので、まずは自社の働く環境のチェックからスタートしてみましょう。

すべての項目にチェックを入れると、結果が下に表示されます

チェック項目 課題
あり
少し
課題
あり
課題
なし
業務に必要な資料や資材は常に所定の位置にあるか。
資料や資材は使う人が使いたいときに使える状態にあるか。
資料や資材を使用した後は、もとの位置に戻しているか。
使わないものは片付け、不要なものは廃棄しているか。
必要なものを長時間探すようなことはないか。
従業員の移動(更衣室から職場、執務室から会議室など)に時間がかかっていないか。
資材運搬時などに移動距離が長くないか。
従業員が移動する通路が狭く、移動しにくいことはないか。
人の移動と物の運搬の通路が同じで、通りにくいことがないか。
エレベーター待ちなど、移動の待ち時間が長くないか。
従業員の1ヶ月の残業時間が45時間を超える月が続くなど労働時間が長すぎないか。
従業員は毎週1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日が取得できているか。
1日の労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要だが、休憩時間中に仕事をしている従業員がいないか。
朝の定時より早く出勤し、朝残業として申請していない従業員がいないか。
仕事が終わっても上司がいるから帰れないことがないか。
時間帯で従業員の過不足が発生していないか。
年末や年度末など、特定の時期に従業員の過不足が発生していないか。
指示を待っていて動けない従業員がいないか。
従業員ごとに適切な業務量が割り当てられているか。
管理職の人数が多いなど職場に役職の偏りがないか
作業の手順は統一されているか。
従業員ごとの作業の質にばらつきがないか。
従業員ごとの作業量にばらつきがないか。
従業員ごとの労働時間や有給休暇取得率に大きな差がないか。
特定の従業員がいないとできないような、属人的な業務がないか。
部門ごとの労働時間や有給休暇取得率に大きな差がないか。
業務の忙しさが、部門間でばらついていないか。
業務の重さが、部門間でばらついていないか。
どの部門の業務かはっきりしない仕事がないか。
仕事を頼みやすい部門に業務が偏っていないか。
小さなミスが発生していないか。
繰り返し同じミスが発生していないか。
事務作業や管理作業に時間がかかりすぎていないか。
事務作業や管理作業に手作業が多くないか。
事務作業や管理作業が古い習慣のまま残っていないか。

チェックお疲れさまでした。
早速チェック結果を見てみましょう。

御社での働く環境に問題はございません

職場の整理・整頓

必要な資料や資材がすぐに見つからないなどの課題が最も多かった職場は、ものの置き場や保管場所が決められてない、片付けや清掃などは雑用と捉えられていて重要視されてないなどの職場の整理・整頓に関する課題が顕在化している可能性があります。

従業員の動線

従業員の移動や資材の運搬などの課題が最も多かった職場は、職場のレイアウトが従業員の動線とミスマッチになっている、設備の位置や通路の状態が適切でないなどの職場の動線に関する課題が顕在化している可能性があります。

従業員の労働時間

従業員の残業が多いなど労働時間の課題が最も多かった職場は、業務量に対して従業員数が少ない、従業員が1日に行える業務量より多くの仕事が割り当てられている、会議やミーティングの時間が長いなどの課題が顕在化している可能性があります。

従業員の配置

時間帯や時期による従業員の過不足などの課題が最も多かった職場は、業務量に応じた従業員数が割り当てられていない、時間や曜日などで繁忙な時間と閑散する時間があることが把握できていないなどの従業員の配置に関する課題が顕在化している可能性があります。

従業員のスキル

従業員ごとに作業量や作業の質が偏っているなどの課題が最も多かった職場は、人により業務量の割り当てが均等になっていない、高いスキルを持った従業員のスキルが他の従業員に伝わってないなどの従業員のスキルに関する課題が顕在化している可能性があります。

部門間の忙しさ

部門間で仕事量が異なり勤務時間にばらつきがあるなどの課題が最も多かった職場は、部門ごとの業務量が均等に割り当てられていない、時期的に業務量が少ない部門に他の部門の支援をさせていないなどの部門間の忙しさに関する課題が顕在化している可能性があります。

事務作業・管理業務

事務作業に手作業が多くミスが発生しやすいなどの課題が最も多かった職場は、事務作業や管理業務が手作業中心になっている、チェック項目が増え続けていてチェックに時間がかかるなどの事務作業や管理業務に関する課題が顕在化している可能性があります。

現在の業務を可視化する

自社の職場に顕在化している課題を、目で見て分かるようにするために、現在の業務を可視化(見える化)してみましょう。可視化するためには、現場の従業員のヒアリングも欠かせません。

業務を一覧化する

自社の業務を一覧表で可視化することは、業務改善の第一歩です。現在の業務をすべて洗い出して一覧化し、以下の【業務一覧表(例)】を参考に作成してみましょう。

【業務一覧表(例)】
大項目 中項目 小項目 作業内容 備考
総務部 備品管理 備品の調達 購入する備品を決め、注文を行う
備品管理簿への記入 備品が納品されたら管理簿に品名と数を記入 管理簿の様式あり
会議室予約 予約簿の作成 会議室予約簿を作成し、会議室の入り口に掲示 予約簿の様式あり
予約簿の記入 会議室利用者の名前と連絡先を管理簿に記入
経理部 支払業務 支払伝票の作成 請求書を受け取ったら、支払伝票を作成する

一覧化すると、特定の従業員頼みの業務がある、同じ業務を異なる部門で別々に行っているなど職場の課題に気づくことができ、業務改善を考える材料となります。なお、既に一覧化をしている場合は、一覧が最新化されているか確認しましょう。

現場へのヒアリング

業務の可視化には、実際の業務を行っている現場の従業員のヒアリングが欠かせません。従業員の意見を丁寧にヒアリングして、管理部門では気づきにくいが、現場の従業員が対応に困っていることや、時間がかかっている業務などの状況把握を正確に行うと、業務を改善するポイントが見えてきます。従業員がなんとなくうまくいかないと感じていることや、ミスが起きたことなども課題となるのでヒアリングしておきましょう。
企業によっては、外部のコンサルタントに業務改善を依頼する場合や、経営者や管理職などが業務改善の方針を決めることもありますが、業務改善を日々行うのは従業員であることを念頭に置き、従業員に協力を依頼しましょう。

業務マニュアルとフローチャートの作成

業務の一覧表の作成ができたら、次は業務マニュアルの作成を行います。業務マニュアルには、一覧化した業務のひとつひとつをどのように行うかを記載します。従業員が業務マニュアルを見ながら業務を行うことでスムーズに業務を行うことができます。
また、業務の流れはフローチャートを作成すると分かりやすくなります。フローチャートには、何をインプットして、どのような業務プロセスをすると、アウトプットとして何が出てくるかが分かるように書きます。
業務マニュアルやフローチャートの作成は現状の業務プロセスを可視化します。ひとつひとつの作業を可視化すると、個人が行っているムダな業務に気づくこともできます。

まとめ

働き方の環境が変化する中で企業が成長や発展を目指すには、業務改善が必要不可欠です。今回は業務改善が求められる背景や業務改善のメリットを知り、職場の課題の有無をチェックしました。業務をよく知っている現場の従業員の協力も得て、業務改善の一歩目を踏み出しましょう。

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