非常時に備える電力を策定するには、設備などの「ハード面」と、それを扱い管理する人の役割や考え方の「ソフト面」の両面を考える必要があります。
まず、ハード面としてのポイントは、大きな地震の場合、激しい揺れによる電気設備への影響をできるだけ避ける対策を考えます。
例えば、重量のあるトランス(変圧器)などの設備の場合、激しい揺れで固定しているボルト・ナットが緩んだりはずれたりして、設備の傾きやズレといった危険な状態になることが考えられます。
基本対策としては、日常の点検において、固定しているボルト・ナットの緩み、締め付け具合などを点検することが大切です。ナットの抜け、傷、そしてボルトが錆びて形に異常がないかなどをチェックします。もし、異常を見つけた場合は、出来るだけ早く交換します。
また、トランスは端子にケーブルが接続されているので、ズレによってケーブルが引っ張られ、外れや接触といった危険な状態になりかねません。そこで、トランスなどの大型設備でも、しっかりとした耐震支持金具を取り付けるとともに、ケーブルのつながる端子部分は多少の移動を吸収できる「フレキシブル導体式」のものに変更することを検討します。
同様に、ケーブル(配管を含む)、配電盤、空調設備、その他の電気設備等の日常点検においても災害の発生を事前に意識し、しっかりと行うようにします。
大災害により、大規模かつ長期の停電が起きた場合を考え、代わりの電気を得る手段として「非常用電源」の備えは事業活動を続けるうえで重要な鍵となります。
「非常用電源」とは、ほぼ自家発電設備のことを指し、発電の方法や発電能力などによりさまざまなタイプがあります。現状、実用的なのは、ディーゼルエンジンなど、石油燃料を用いて発電機を作動させるタイプのものです。他にもガスと石油燃料を切り換えられるデュアルフューエルエンジンもあります。
非常用電源は、普段使用している電気設備・機器の全てを使用できる発電能力は持っていないため、停電時に優先して使用する電気設備・機器を絞り込み、その最大消費電力をカバーできる能力のものが必要となります。
また、停電は予告無く突然発生する場合もあるため、電気が途絶えた時にすぐに発電をスタートし、必要な電気が使用できるよう耐震構造の専用配線や自動切換システムにすることが望まれます。
ソフト面での対策は、まず第一に、大災害の発生直後からの人命を守ること、非常用電源はその後の維持、救命活動に必要な最低限の電気を供給するための設備として考えます。さらに、電気が復旧するまでの間の事業活動を継続するための「つなぎ」としても考えます。
こうした考え方を非常時に確実に実行するためには、電気利用計画をしっかりと立て、使用している設備・機器の役割と重要度、利用の範囲、利用時間などを確認し、「電力使用設備・機器リスト」や「非常時使用プログラム」、「災害発生時チェックシート」などマニュアルとしてまとめ、非常時はもちろんのこと、訓練などで活用しやすいようにします。
次ページでは「第2回 BCPを構築する1」の策定ポイントを業種別に整理、設備・機器の視点でもまとめました。ご利用ください。
第2回