電力会社がご提案するBCP策定ガイド

第3回 BCPを策定する❷

第3回BCPを策定する2の業種別ポイント

ここまで解説してきたBCP策定のポイント(「4. 事前対策の検討」~「5. 緊急時の体制整備」)を業種別にご紹介します。

業種 ポイント
製造業

緊急時に機械設備を確保することができたとしても、それを動かすことができる資格やスキルを持つ従業員がいなければ、事業を継続することが困難になります。そのため、重要商品(中核事業)にかかる資格やスキルに関する所持状況を一覧表などに整理し、資格やスキル所持者が少ないものに関しては、代わりの要員を育成するよう取り組んでいくことが重要となります。

地震や情報セキュリティ問題により工場や機械設備が受けた影響が軽微の場合、影響を受けた部分を修繕することで、復旧が可能となります。しかし、工場の倒壊、機械設備の稼動プログラムの修復不可能など、影響が大きく早期の復旧が難しくなる場合があることも考慮しなければなりません。復旧が困難な場合、通常とは異なる拠点(自社の別拠点、同業他社・顧客の工場の間借り など)で商品を代替生産することが有効となります。そのため、事前対策検討時には、どのように代替生産をおこなうのかについても考えておくことがポイントとなります。

卸売業、小売業

あなたの会社が無事であっても、重要商品(中核事業)の調達先や物流業者が重大な被害を受けたため商品を調達できず、お客さまに販売できなくなることもあります。そのため、調達先から商品を調達できないという事態も考慮し、調達先を複数リストアップし代替調達を検討する、物流業者と緊急時対応を協議するといった対策を検討しておくことが重要です。

在庫保管場所の分散化、データ保管場所の分散化(バックアップ)もポイントとして挙げられます。一般的に分散化への取り組みは、地震や火災などの災害への対策としてとらえられがちです。しかし、データ保管場所の分散化(バックアップ)に関しては、情報セキュリティ問題への対策として有効な場合もありますので、それも踏まえて検討することをおすすめします。

宿泊業、
飲食サービス業

宿泊場所などを確保するための対策を検討・実施しておきましょう。しかし、宿泊施設などが受ける被害が重大となってしまった場合、宿泊場所の確保が困難となることもあります。そのため、場所が確保できなくなってしまった時のお客さまへの対応も検討しておくことが重要です。

ボイラーの保守管理などを外部に委託している場合は、外部委託先と緊急時の対応に関して協議し、もしくは早期の事業復旧に向けてどのような対応をとるのかについて、取り決めておくことをおすすめします。

医療、福祉

優先度を踏まえて診療科目順に対応することは、日ごろの業務内で経験していると思われますが、緊急時には優先度の高い診療に必要となる医療機器や電源、薬品が確保できなくなることも考えられます。そのため、自家発電機の設置、精製水の備蓄など、ライフラインの信頼性を高めるとともに、医薬品の調達手順についてもあらかじめ検討しておくことが望まれます。事前に医薬品卸売業者や医師会との連携も考えておきましょう。

危機時に患者のレセプトデータを紛失することも業務再開に大きく影響しますので、データのバックアップなども事前の対策として必要となります。

福祉施設については、利用者の人命をいかに守るかがポイントであり、避難経路の確保や感染予防策の実施などが重要となります。

「第4回 BCPを運用する」では、策定したBCPを従業員に理解してもらい、維持していく方法を解説します。

第3回